

動物に優しい福島に―。近年、県などに保護された猫のうち、新たな飼い主が見つかり、引き取られるケースが大きく増えている。2024(令和6)年度に希望する人の手に渡った保護猫の割合は62・1%で、統計が残る2002(平成14)年度以降で過去最高となった。関係者は、ペットを持ちたい愛好家の増加だけでなく、動物の命を慈しむ機運が県内で一層高まったことが背景にあるとみる。26日までは動物愛護週間。県は「命の尊さを考えるきっかけにしたい」と呼びかけを強める。
「優しい人にもらわれるといいね」。動物愛護の拠点・県動物愛護センター(ハピまるふくしま)=三春町=で獣医技師が健康状態をチェックしながら保護猫の頭をなでる。昨年ごろからホームページに載せた写真や動画を見た人らからの問い合わせが大幅に増えている。愛らしい姿に県外からも連絡が寄せられるほどだ。
県内で引受先が見つかった保護猫の数と割合の推移は【グラフ】の通り。県と福島、郡山、いわきの3市が、飼うのが難しくなり保護するなどした猫の対応をまとめた。譲渡先が見つかる割合は震災以降、1割台にとどまっていた。令和以降に増え始め、2024年度は前年度を大きく上回る6割台に達した。件数も前年度より3割以上多い710件に跳ね上がった。
県はコロナ禍の自宅で癒やしを求める「ペットブーム」の拡大だけでなく、関係者による地道な取り組みが後押ししたとみる。センターでは、世話が難しい生まれたばかりの猫を、育てやすい大きさまで育てる工夫を取り入れた。震災発生から間もない時期、やむを得ず県内で殺処分に至るケースは年間3千匹を超えており、一時全国でも最多だった。そうした現状を講座などを通して伝えた。愛護への理解が着実に広まり、2024年度の殺処分は379匹まで激減した。
猫を保護して譲渡先を確保することは、ごみ捨て場などを荒らす野良猫を減らす意味でも重要となっている。ただ、関係者によると、物価高は餌などのペット用品にも直撃しており、ペットを手放す選択をする家庭の増加も懸念される。センターでは譲渡の際、猫の状態を説明するだけでなく、希望者の生活背景も聞くなどしている。担当者は「命を迎え入れる重さをしっかり考えてもらうようにしたい」と話している。
■広がれボランティアの輪 一時預かりや譲渡など 県が制度設置
県は今年度、保護猫の引受先がさらに見つかりやすくなるよう、協力する人を増やす取り組みに乗り出した。
授乳や人に慣れさせるしつけが必要な小さな犬猫を世話する一時預かりボランティア、他の人に引き渡すことを前提に一時引き取る第三者譲渡ボランティアなどを担ってもらう新たな制度を設けた。動物愛護の輪を広げたい人たちを募り、各地域での県民同士のつながりなどを生かす考えだ。
子猫が生まれ続け、飼育できないほどの数になってしまう「多頭飼育崩壊」も問題となっている。県はボランティアと連携し、小学校で獣医師による講座を開くなど適正な飼育法の普及にも力を入れていく。動物愛護週間に合わせ、犬や猫の適切な飼い方などに理解を深めてもらう「犬猫検定」も初めて企画した。県のホームページ上から参加できる。