論説

【避難所運営】連携強め環境改善を(9月25日)

2025/09/25 09:19

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 県内59市町村の約半数で政府が昨年指針を改定した災害避難所の運営基準を満たしていない。共同通信社が先月発表した全国アンケートで明らかになった。未達成は「避難所のトイレの確保」で32市町村(54・2%)、「避難所の居住空間確保」で27市町村(45・8%)に上った。避難環境の悪化は災害関連死に直結する。頻発し激甚化する自然災害に備え、官官、官民の連携を強化し、避難所の改善に努めたい。

 災害対策基本法は市町村が災害用物資を備蓄し、避難所を開設すると定めている。これまで避難所では床上で雑魚寝せざるを得なかったり、トイレが足りず不衛生を強いられたりするなど、環境の劣悪さが指摘されてきた。政府は自治体向けの指針に国際基準を反映させ、災害発生初期のトイレは50人に1基分を用意し、避難者一人当たり最低3・5平方メートルの専用空間を確保するよう求めた。

 一方、小規模自治体からは災害用トイレを備蓄する予算や保管場所、専用空間の基準を満たす大規模施設を確保できないとの声も上がる。

 広域連携を強めて万が一の事態に備える必要がある。郡山市と周辺16市町村でつくる「こおりやま広域連携中枢都市圏」は圏内を4ブロックに分け、災害時にブロック内で職員を相互派遣する体制を整えた。2019(令和元)年の台風19号の際は被災地に応援職員が入り、避難所対応で成果を上げた。こうした枠組みを活用すれば、複数の市町村が移動式の災害用トイレを共同で管理し、状況に応じて複数の市町村に避難所を分散させるなどの臨機応変な対応も可能になるだろう。

 企業との連携も積極的に進めてはどうか。ホームセンターやスーパーマーケットと、災害発生時の生活物資や車中避難場所となる駐車場の提供で協定を結ぶ県内の市町村が増えている。業者側に備蓄品の保管を担ってもらったり、店舗の駐車場に避難所を確保したりする道も開ける。

 さらに、国と都道府県の連携では被災地からの要請を待たずに災害物質を送る「プッシュ型」支援への備えを強化しておくべきだ。市町村の災害用トイレなどの備蓄状況を事前に把握し、どこに何を送るかを想定した訓練も重要になる。(斎藤靖)