論説

【復興再生土】呼称で理解は進むのか(9月27日)

2025/09/27 09:08

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 環境省は東京電力福島第1原発事故で生じた除染廃棄物のうち、公共事業などで再生利用できる土壌の呼称を「復興再生土」に決めた。一般的な除染土壌と区別化を図り、広く利用を促していくのが狙いだという。改称によって一定のイメージ改善は期待されるが、国民の放射線に対する不安は根強く、安全性や再資源化の必要性などの理解醸成に結び付けられるのか注目したい。

 呼称を巡っては、自民党と公明党が、放射性物質濃度が比較的低い再生利用可能な土は資源であることを国民に分かりやすく伝えるためにも新たな呼び名を検討するよう求めていた。環境省は22日に開いた有識者会議の初会合で呼称案を示し、委員から異論は出なかったという。今後、政府が作成する資料には「復興再生土」と表記される。

 新たな名前を用いて、除染土壌との違いを明確にするのは重要な視点である。ただ、呼称に付けた「復興」の2文字に違和感を覚えざるを得ない。中間貯蔵施設は県内の除染廃棄物を一時保管するため、地元が苦渋の決断で国の要請を受け入れた経緯がある。国策によって築かれたわけで、国が土壌を搬出し、元通りにするのは当然の責務である。それを災害と同じく「復興」と印象付けるのはいかがなものか。被災地の将来を熟慮しての発想であろうが、当事者である環境省の自覚を問いたい。

 呼称の使い分けでは、東電福島第1原発で溶融核燃料(デブリ)の冷却により発生する「汚染水」と多核種除去設備(ALPS)で浄化された「処理水」が思い浮かぶ。処理水は海水で希釈され、基準値未満にしてから海洋に放出されているが、安全性に対する理解はなかなか深まらなかった。除染土の再生利用に向けては、処理水問題で得た教訓を生かし、丁寧な説明を地道に継続してほしい。

 政府は再生利用に関する国民の理解醸成を図るため、民間工事でも取り入れてもらう考えだ。東京都千代田区にある東電本店は周辺の大規模再開発に併せてビルの建て替えを計画している。原発事故の当事者である東電こそ、率先して再生土を利用すべきだろう。呼称によって印象を変える以上に効果を生み出すのではないか。(角田守良)