
福島県郡山市の夫婦デュオ「インザウィンド」の菊地美一さん(73)と陽子さん(69)が26日、同市のもみの木クリニックで9カ月ぶりのライブに臨んだ。陽子さんは国指定難病、美一さんはがんを患う。ともに闘病生活を送りながらステージに戻り、旋律を奏でる喜びをかみしめた。
陽子さんは2023(令和5)年1月に特発性間質性肺炎と診断された。今年1月に容体が急変し、危篤状態に。一命は取り留めたが、寝たきりの日々が続いた。「もうダメかも」と諦めかけた。
夫の病が回復への転機となった。美一さんも昨年11月に前立腺がん、今年5月には大腸がんが見つかった。病状を知った陽子さんは「世話を焼かせたくない」と、自力でトイレに行くなど介助を得る回数を減らした。白米や肉を食べるよう努めて体重を戻し、6月には持ち歌を口ずさめるほど持ち直した。
26日は陽子さんの訪問診療を担うクリニックの福井謙院長が2人の励みになればと場を提供した。約50分間のステージでオリジナル曲や「いのちの歌」など7曲を披露。陽子さんは酸素を吸入しながら強く伸びやかな歌声を響かせた。美一さんは「こんなに歌えるのは奇跡」と感極まった。
11月には市公会堂でコンサートを開く。陽子さんは「少しでも長く歌えたらいいな」、8月に手術した美一さんは「演奏する姿で同じ病気の人を励ましたい」と意欲を燃やす。結成51年目。愛に満ちたハーモニーを響かせ続ける。