


国勢調査に乗じ、個人情報を不正に入手しようとする事例が福島県内で確認されている。調査員をかたる不審人物による訪問や、偽メールで家族構成や資産情報などを聞き出す手口で、詐欺や「闇バイト」が関わる犯罪に巻き込まれる恐れもある。県内の75万世帯余りを含む国内全世帯を対象とした調査は10月1日から調査票の郵送・提出期間に入る。県や県警は「不審に感じた場合は市町村や警察に連絡してほしい」と注意を促している。
県消費生活センターによると、棚倉町の30代男性方には調査書類の配布が始まる前日の19日、男がやってきた。インターホン越しに応対すると、男は調査員を名乗り「家族構成や口座情報を教えてください」と求めてきた。相手が身分証を示さなかったため男性は不審に思い、玄関ドアを開けずに追い返したという。
20日には伊達市の50代男性のスマートフォンに「国勢調査への協力のお願い」と題したメールが届いた。回答期限は翌日の「21日」と書かれ、本文には「オンラインで回答すれば、地域限定のオリジナル記念品を贈呈する」といった誘い文句が記されていたという。回答用のURLも添付されており、別サイトへ誘導を狙ったとみられる。
調査依頼を装った不審メールに関する相談は、会津若松市、郡山市などの相談窓口にも寄せられている。
国は国勢調査を「最重要の統計」と位置付けており今調査では、調査書類は9月20~30日に各世帯に配布される。回答期限をインターネット回答の場合は9月20~10月8日、郵送・調査員への提出は10月1~8日としている。未回答世帯には10月17~27日に調査員らが訪ねるなどして提出を促す。所管する総務省統計局は「回答期限は10月8日」と正規の日程を強調した上で「メールで協力を依頼することも記念品を贈ることもない」と警鐘を鳴らす。
県や県警などは不正防止に向け、注意喚起に力を入れる。県統計課は動画投稿サイト「ユーチューブ」で調査に関する1分ほどのショート動画を公開。調査概要に加え、「かたり調査にご注意」とした啓発動画を発信している。大橋達弥課長は「正規の調査かどうか十分に確認し、対応してほしい」と呼びかけている。
県警は不審な訪問や連絡の背景には、資産状況を把握し、成り済まし詐欺や金銭の強奪などをもくろむ者が潜んでいるとみている。ポリスメールで全県に警戒を促し、チラシを配るなどしている。県警本部生活安全企画課は不審人物が接触を図ってくる恐れは当面、続くとみている。
■顔写真入りの調査員証携帯
県統計課によると、正規の調査員は顔写真入りの調査員証や青色のバッグなどを携帯している。調査員の特徴は【表】の通り。金銭を求めたり、預金額などを聞いたりすることは「絶対にない」としている。
※国勢調査 日本の人口や世帯の実態などを把握するため統計法に基づき5年に1度、国が実施する。基準日は10月1日。外国人を含め、国内に住む全ての人が対象。性別や国籍、現住所での居住期間、世帯員数、就業状態など17項目を調べる。結果は国や自治体による人口対策、産業振興などの基礎資料となり、地方交付税の算定、少子・高齢化の将来予測などにも利用される。コンビニやスーパーの出店計画にも影響するとされる。回答方法は①郵送②調査員への提出③インターネット―の3種類ある。