
ふたば未来学園(福島県広野町)が創立10周年を迎えた。2015(平成27)年の開校以来、これまでに千人を超える若者が巣立った。建学の精神「変革者たれ」の下、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興へ進む地で、さまざまな課題と向き合う人材を育てている。10月4日に催す記念式典を前に、学校の歩みや学びの特色、在校生の姿を紹介する。
爽やかな秋空の下、広野町の小高い丘に立つ学びやに次々と生徒が登校する。太平洋から昇る朝日に、笑顔が輝く。震災と原発事故からの復興の願いが込められた校舎で学びを深め、部活動に励む。育まれた感性と熱意は、地域に活力をもたらしてきた。
双葉郡内での教育活動は2011年3月に発生した震災と原発事故により、一時は途切れた。双葉、双葉翔陽、浪江、浪江津島、富岡の県立高5校は避難指示に伴い、本校を離れ、郡外各地でサテライト方式による授業を余儀なくされた。
双葉地区教育長会は歴史上、類を見ない特殊な状況下で教育復興を目指し、2012年に「県双葉郡教育復興に関する協議会」を設立。翌年には「県双葉郡教育復興ビジョン」を取りまとめ、県立の中高一貫校の設置を提唱した。
県による中高一貫校に関する検討会が設置され、教育課程や生徒募集の方針を決定。2015年4月8日には広野中を仮校舎とし、ふたば未来学園高が開校した。並行して県立高5校は募集を停止し、2017年に休校となった。
ふたば未来学園は各校の教育の歴史と情熱を受け継ぐ、「総合学科」として歩みを始めた。進学に向けて主要5教科を集中的に学ぶ「アカデミック系列」、サッカーやバドミントン、野球、レスリングなどのスポーツで高い技術を習得する「トップアスリート系列」、農業や工業、商業、福祉の知識・技能を学ぶ「スペシャリスト系列」を設けている。2019年には併設型の中学が開校し、新校舎も完成して中高一貫教育の環境が整った。
学びの礎となるのが建学の精神「変革者たれ」だ。自らを、地域を、社会を変革する挑戦者を志すよう求めている。双葉郡の教育の灯を絶やすまいという地域の願いと、復興を成し遂げようとする熱意が宿る。
開校時から5年間、初代校長を務めた丹野純一福島高校長(58)=県高校長協会長=が掲げた。「困難の中で価値観やシステムを問い直し、新たな社会や地域をつくり出す変革者が必要との思いを込めた」と振り返る。建学から10年、特色ある探究学習や演劇教育、哲学対話の充実、部活動の活躍を感じている。「生徒にはこれまでの歩みを引き継きながら学びを発展させ、変革者としてそれぞれの未来に進んでほしい」とさらなる飛躍を期待する。