【震災 原発事故9年6カ月】中間貯蔵施設への除染廃棄物輸送 計画量6割超える 8月20日時点

2020/09/13 20:14

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 東京電力福島第一原発事故に伴う除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設(大熊町・双葉町)への除去土壌などの輸送が進んでいる。二〇一五(平成二十七)年三月の輸送開始からの累計輸送量は八月二十日時点で約八百四十一万立方メートルとなり計画全体の輸送対象量約千四百万立方メートルの六割を超えた。環境省は二〇二一(令和三)年度末の輸送完了を目指している。


■残り約559万立方メートル 2021年度末完了へ

 二〇一九年度は県内二十九市町村から合わせて約四百五万立方メートルを輸送し、環境省が目標とした年間四百万立方メートルを達成した。大玉村と矢吹町、広野町からの搬出を終えた。対象五十二市町村のうち、二十六市町村から除染廃棄物がなくなった。二〇二〇年度は二十五市町村から輸送している。計画量は前年度と同規模の計四百万立方メートル。八月二十日時点で約百七十二万立方メートルを運び込んだ。

 環境省は、搬入される除染廃棄物の貯蔵に必要なスペースを確保するため、施設整備を進めている。三月末に、主に双葉町の仮設灰処理施設で処理した灰を貯蔵する廃棄物貯蔵施設(双葉1工区)を稼働させた。

 これにより、受け入れから土壌・廃棄物の貯蔵まで中間貯蔵施設の全行程の作業が可能となった。四月には大熊町側の廃棄物貯蔵施設(大熊1工区)も運転開始した。

 草木などの廃棄物を分別する「受け入れ・分別施設」は大熊、双葉両町にある全九施設が動いている。分別後の除去土壌を保管する「土壌貯蔵施設」は三月末に大熊(4)工区の運転をはじめ、両町にある八工区全てが稼働した。

   ◇  ◇

 除染廃棄物は、中間貯蔵施設への搬入開始から三十年以内の県外最終処分が法で定められている。大熊、双葉両町と両町議会は八月、県外最終処分が法定通りに実施されない限り、「町内全域での居住環境整備の見通しは立たない」と指摘し、最終処分地の選定などを進めるよう国に要請した。


■中間貯蔵施設用地取得交渉 建設地全体74.1%契約 7月末時点 地権者270人、連絡先不明

 中間貯蔵施設の用地取得状況は七月末時点の契約面積が約千百八十五ヘクタールとなり、建設地全体約千六百ヘクタールの74・1%に達している。

 契約面積のうち、民有地は約千百四十一ヘクタールで、用地全体に占める民有地約千二百七十ヘクタールの89・9%となった。建設地の地権者二千三百六十人のうち、千七百七十八人(75・3%)と契約を終えている。

 地権者二千三百六十人のうち、依然として約二百七十人の連絡先が判明していない。環境省は家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらい、手続きを可能とする制度などを活用して用地取得を進めている。

 県は八月末、建設地内にある旧県水産種苗研究所と旧県栽培漁業センターの跡地合わせて約六・八ヘクタールを環境省に提供すると表明した。県が中間貯蔵施設建設地内の土地を同省に提供するのは初めてとなる。土地所有権を県に残したまま用地を提供する「地上権」を設定する。


■復興拠点外、除染手付かず 帰還困難区域の首長 「実情に配慮した対応を」

 原発事故に伴う帰還困難区域のうち、富岡、大熊、双葉、浪江、葛尾、飯舘の六町村の特定復興再生拠点区域(復興拠点)で除染や建物解体が進んでいる。

 一方で、復興拠点外の帰還困難区域は原発事故から九年半が近づく今もなお、手付かずのままだ。地元の首長からは地域の実情に配慮した対応を求める声が上がっている。

 政府は、原発事故で出された避難指示を解除する要件として(1)放射線量が年間二〇ミリシーベルト以下に低下する(2)インフラ整備や除染の進展(3)地元との十分な協議-などを定めている。

 飯舘村は原発事故に伴い村内で唯一帰還困難区域となった長泥行政区の避難指示を一括解除する方針案を示した。国は飯舘村からの要望を受け、復興拠点外について、全面的な除染を行わずに避難指示を解除する検討を進めている。

 一方、飯舘村を除く、富岡、大熊、双葉、浪江、葛尾の五町村は除染を前提とした帰還困難区域全体の避難指示解除を国に求めている。内堀雅雄知事は未除染地域でも条件付きで一括解除する考え方を「特殊事例」と表現している。

   ◇   ◇

 環境省は、除染で出た土のうち、放射性物質濃度が一定の基準以下の除染土をできるだけ再生利用し、最終処分量を減らす目標を掲げる。二〇一八(平成三十)年から飯舘村の帰還困難区域で除染土を再生処理し、農地を造成する実証事業に取り組んでいる。

 再生利用を巡っては同省が計画した実証事業に対し、復興のためと理解を示す声がある。ただ、健康への影響や風評被害への懸念があり、導入が進んでいない現状もある。

 環境省は四月、除染土の再生利用に向けた省令改正を先送りした。公共工事で盛り土や埋め立ての資材などとして利用するための基準や管理方法を定めて施行する予定だったが、パブリックコメントに「説明が不十分」といった意見が相次いで寄せられ、改正を見合わせた。


□除染を巡る主な経過 (2020年3月以降)

■2020年■

3月16日 ▼環境省が東京電力福島第一原発事故を受けて国の財政支援を受けて除染する「汚染状況重点調査地域」のうち、鮫川村の指定を解除

4月1日 ▼環境省が原発事故に伴う除染作業で出た土の再生利用に向けた省令改正を先送り

6月3日 ▼政府が帰還困難区域について、除染をしていない地域でも放射線量が年間20ミリシーベルトを下回る場合に避難指示を解除できるよう検討していることが明らかになる

〃 6日 ▼福島12市町村の将来像に関する有識者検討会で、帰還困難区域を抱える富岡、大熊、双葉、浪江、葛尾の5町村が除染を前提とした区域全体の避難指示解除を国に要望。内堀雅雄知事が未除染地域でも条件付きで一括解除する考え方を「特殊事例」と表現

7月2日 ▼帰還困難区域内に特定復興再生拠点区域(復興拠点)が整備される6町村でつくる「原発事故による帰還困難区域を抱える町村の協議会」から飯舘村が脱会したことが明らかになる


(本紙2020年9月6日付に掲載)