
大熊町農業委員会と町は一日、東京電力福島第一原発事故に伴う帰還困難区域の特定復興再生拠点区域(復興拠点)にある下野上地区で試験栽培したコメを刈り取った。帰還困難区域で営農再開を目指しての収穫は初めてで、農業再生に向けた第一歩となった。
水田は約九アールで、今年三月に許可証なしで立ち入りできるようになった町内下野上字清水にある。根本友子会長や町職員ら八人が作業し、検査に必要な約一キロのコシヒカリを鎌で刈り取った。民間の検査機関に玄米を送り、放射性セシウム濃度を調べる。
町は帰還困難区域からの食物の持ち出しを禁じており、今回は検査に回す玄米以外を草刈り機で刈り払った。枯れるのを待ち、全て水田にすきこんで土の養分にする。
栽培に当たっては塩化カリを土にまくなど、放射性物質対策を施してきた。根本会長はイネを手に「除染して現状復旧した土地。生育状況がよく、一束一束が重い。廃棄するのがもったいない」と惜しんだ。試験栽培はあと二年程度続け、出荷が可能な実証栽培への移行を目指す。「担い手不足などの課題を乗り越え、町内に田園風景を取り戻したい」と決意を語った。