一人暮らし全盲者に「点字」ない通知、2週間気付けず 新型コロナワクチンの高齢者接種予約

2021/05/19 11:51

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 新型コロナウイルスワクチンの高齢者接種を巡り、会津地方に住む全盲の六十代後半の一人暮らし男性宅に点字表記のない接種券が自治体から届き、接種予約に必要な情報に気付けないまま約二週間経過していたことが十八日、分かった。男性は電話予約時に告げる十桁の番号を把握できず、自力では申し込むことができなかった。

 男性によると、接種券は四月後半、封筒に入った状態で自宅に郵送で届いた。封筒には自治体名などを示す点字表記はあったが、接種券が入っていることを伝える点字は記されていなかった。

 約二週間後、中身を確認してくれたヘルパーの指摘で接種券が入っていたと分かった。五月上旬の予約開始の直前だった。接種券にも点字表記はなく、男性は「(ヘルパーに)指摘してもらえなければ、予約が始まっても気付けなかった可能性がある」と指摘する。

 封書の内容が分かってからも、申請するのに苦労した。十桁の番号を暗記し、電話で間違いなく伝えなければならなかった。男性の住む自治体は予約の申し込みが集中し、電話がつながりにくい状況にある。「ようやく電話が通じても、番号を言い間違えたら迷惑を掛けてしまう」。男性は自力での申し込みを断念し、ヘルパーの支援を受けて期間内に予約を完了させた。

 男性によると、この自治体から届く書類関係は点字に対応している場合もある。にもかかわらず、命と健康に直結するワクチン接種に関する書類に点字表記がなかったことに驚きを隠せない。「せめて電話が一本あるだけで全く違うのに。全盲の一人暮らしの人は置いてけぼりなのか」

 厚生労働省は三月三日付の文書で、視覚障害者がワクチンに関する情報を入手できるよう、点字や拡大文字の表記の検討などを都道府県に通達。県は全市町村に事務連絡として周知した。男性に接種券を送った自治体は、点字を表記していなかったと認めている。

 新型コロナのワクチン接種は前例のない事業のため、男性も「実務を担う市町村の負担が大きい」と一定の理解を示す。一方で「自分と同じような事例が、他の自治体でもあるかもしれない」と、各地のワクチン接種事業の進行の影で、障害者に配慮が行き届いていない状況を懸念している。


■県、市町村に配慮要請へ

 全盲の男性宛てに点字表記のないワクチン接種券が届いたのを受け、専門家は接種予約を巡っては全ての人に等しく機会が与えられるべきで「自治体側の配慮が欠けていた」と指摘している。県は全市町村に対し、障害者に配慮して接種を進めるよう改めて通知する方向で検討に入った。

 障害者福祉を専門とする斉藤隆之福島学院大福祉学部准教授は「ワクチン接種は全ての人が機会を均等に得られなければならない。それが担保されていない」と強調。「情報弱者になりがちな盲ろう者が不利益を被らないよう、十分な配慮が必要だ」としている。