
新型コロナウイルスワクチンの接種加速に向け、福島県福島市は県内に先駆けて市独自に企業の職域接種会場を確保し、態勢を強化する。七月に福島トヨタクラウンアリーナ(市国体記念体育館)内に新たに設ける集団接種会場の一部を、企業の職域接種会場として提供する。自社で実施することが難しい企業が、会社単位で接種を進める環境を整える。
市内の企業や事業所などに周知し、希望を募る。原則としては各社に産業医などの医師や看護師といった「打ち手」を確保してもらう方針だが、確保が難しい場合には、会場で集団接種を担う医療スタッフに問診や接種を担ってもらう方向で調整している。
政府が進める職域接種は従業員千人以上の職場などを対象にしている。福島県内企業では、ヨークベニマル(本社・福島県郡山市)やゼビオ(本社・郡山市)など多くの従業員を抱える企業が職域接種の実施を表明している。
一方、福島市は独自に中小企業にも職域接種を促していたが、接種会場や打ち手、運営スタッフなどを自前で確保するのが難しいといった声が上がっていた。
市は集団接種会場の一つを現在の福島県保健衛生協会から、よりスペースが広い福島トヨタクラウンアリーナに移すことで、企業向け職域接種を可能にする。会場の設置は七月一日となる見通し。
集団接種が可能な人数も一日当たり約百八十人から大幅に拡充し、NCVふくしまアリーナ(市体育館)の一日当たり約六百人と合わせて大幅に増える。福島市医師会は医師二十五人、看護師十八人を集団接種会場の運営要員として新たに派遣する予定。
市の担当者は「職場内で休みなどが調整しやすい職域接種が広がれば、ワクチン接種が円滑に進む。市内の従業員数百人前後の企業などに積極的に協力を求めていきたい」と話している。
市は現在、六十五歳以上の高齢者約八万五千人へのワクチン接種を進めており、国が掲げる「七月末完了」を目標としている。ただ、八月以降の接種予約者がおり、予約の前倒しを促している。六十四歳以下の市民への接種も控えており、接種態勢の強化・拡充が喫緊の課題となっている。このため市は七月から集団接種会場で歯科医師らに「打ち手」として協力してもらう方針を打ち出している。
市は高齢者の接種のめどが付いた後、六十四歳以下の接種を本格化させる。基礎疾患のある人や教育関係者への接種を優先させる方針。さらに、集団接種会場での職域接種を実施し、早期の完了を目指す。