


8日は山に親しみ、恵みに感謝する「山の日」。登山やキャンプで大自然の雄大さを体感するには絶好の季節を迎えた。緑豊かな奥会津を訪ねた。
金山町のシンボルである沼沢湖の南西岸に前山(835メートル)がある。北西岸の惣山(816メートル)とともに湖を見下ろすように囲む。湖と里山の織り成す絶景は登山客を引き付けてやまない。
宿泊施設「Dom’Up(ドムアップ)沼沢湖」を出発し、太郎布(たらぶ)登山口から前山を目指す。緩やかな傾斜を20分ほど歩くと、前山と惣山の分岐点を迎える。尾根に沿って南東へと細い道を進む。急勾配と平たんな道が交互に続く。せみ時雨の響き渡る広葉樹の森が日差しを遮り、暑さが和らぐ。時折、視界が湖を捉える。
沼沢湖は約5600年前の火山の噴火でできたカルデラ湖。縁に立つ2つの山は溶岩ドームだ。最大水深は県内一の96メートルに達し、東北有数の透明度を誇る。全国で数少ないヒメマスの生息地として知られる。
湖には大蛇の伝説が残る。800年ほど前、村人を困らせていたが、会津藩主の始祖佐原十郎義連(よしつら)が退治したという。現代の「沼沢湖水まつり」は大蛇退治を再現し、逸話を今に伝える。
分岐点から50分。山頂に到着したが、眺望は開けていない。さらに尾根伝いに15分ほど歩く。岩場に出た瞬間、湖を一望するパノラマが広がった。
緑がかった青色の湖面は絵の具で染めたように鮮烈で、真っ白な夏雲が映える。周囲には惣山をはじめとする濃い緑が連なる。湖畔に赤いトタン屋根の集落が見えた。奥会津の冬は厳しい。大自然とともに生きる人々の営みに思いを巡らせた。
一緒に登った地元の遠藤晴男さん(76)は長年、子どもたちの登山を案内している。「成長して町を離れても、古里を思うとき、山の景色を思い出してほしい」と願う。山の記憶は連綿と受け継がれていく。
文 鈴木 信弘
写真 古川 伊男
■なすびのお薦めポイント 山頂の先にご褒美
沼沢湖を見ながら登れるので楽しい。山頂で諦めず絶景ポイントまで行けば、最高のご褒美が待っています。
(次回は8月15日掲載予定)