「三月はライオンのように訪れ、子羊のように去って行く」。英国の天候に関することわざだ。三月のはじめは荒々しい天気で、最後は穏やかに春へと移ろうさまを表す。対照的な動物の姿を思い浮かべると、例えに合点がいく▼本県でも、空模様の移り変わりが激しい季節だ。冬の名残が色濃く、気温が上昇したかと思えば、雪が吹き荒れる。寒暖の差も大きい。春の嵐に見舞われることも。一方、古くから「暑さ寒さも彼岸まで」と言われるように、四月が近づくにつれて春めいてくる。自然と気分も浮き立つ▼年度末のこの時期、世の中は何かと慌ただしい。受験シーズン真っただ中の中高生や就職に向けて準備を進める新社会人、人事異動の内示を受けたサラリーマンにとって、怒濤[どとう]のごとく時間は過ぎ去る。期待と不安が入り交じり、気持ちはどこか落ち着かない。人生で誰しもが経験する節目だ▼きょう一日は多くの高校で卒業式が行われる。コロナ禍で学校生活を送り、目に見えない「嵐」が過ぎるのを耐える日々だったかもしれない。それでも、苦難を乗り越えた経験は必ず糧になる。今年こそ、穏やかで希望に満ちた春を迎えられることを願う。