
国土交通省は3月16日の最大震度6強の地震で損傷し通行止めとなっている399号国道・伊達橋(全長288メートル・伊達市)と県道浪江国見線・伊達崎橋(全長303メートル・桑折町)について、国の直轄権限代行事業で復旧する方向で検討に入った。斉藤鉄夫国交相が1日、内堀雅雄知事から緊急要望を受け、意向を示した。採択されれば、国による災害復旧の対象が県道にも拡大された改正道路法施行後、県内初の事例となる。
緊急要望はオンラインで行い、冒頭を除き非公開。内堀知事は高度な技術力が必要で、復旧工事を担う人材の確保も不可欠と指摘し、「地域の生活に大きな支障を及ぼし、一刻も早い復旧が求められる。国が迅速かつ強力に進めてもらいたい」と訴えた。伊達崎橋については詳細な損傷具合が分かっていないとして、国による被災状況の調査も求めた。斉藤国交相は「権限代行や直轄診断の必要性をしっかり検討していく」と前向きに応じた。
直轄権限代行事業が実現すれば、大規模災害復興法が適用された2019(令和元)年の台風19号による災害復旧と同じように迅速な対応となる。国管理の一級河川・阿武隈川に架かる橋の復旧を国が担うことでさまざまな協議が加速し、応急復旧だけでも2~3年とされる復旧工事の短縮が期待される。伊達橋は1967(昭和42)年8月完成で老朽化しており、架け替えを含めた恒久対策が検討されるとみられる。国の災害復旧制度に基づき災害査定で決定された復旧事業費の多くは国庫負担の対象となる見通し。
県によると、伊達橋と伊達崎橋の交通量は1日計2万台。月の輪大橋(福島市)や大正橋(伊達市)などへの迂回(うかい)を余儀なくされており、周辺の道路は渋滞が頻発している。伊達橋、伊達崎橋とも県地域防災計画に基づく緊急輸送道路に指定され、相馬地方と山形県を結ぶ東北中央自動車道「相馬福島道路」の代替路にもなっている。通行止めが長期化すれば、生活や物流、救急搬送など多方面への影響が懸念される。
国の直轄権限代行事業を巡っては、2011(平成23)年の新潟・福島豪雨で流失した252号国道二本木橋(金山町)、2019年の台風19号で被災した289号国道(いわき市)を国主導で早期に復旧した実績がある。