
福島県内の新型コロナウイルス感染拡大に伴い救急患者の搬送先が決まらない「救急搬送困難事案」が増え、冬場の救急医療に危機感が高まっている。困難事案は昨年12月中旬をピークに減少していたが、年明けの感染再拡大による医療逼迫(ひっぱく)を背景に再び増加。降雪期は骨折による救急搬送などが増える傾向にあり、関係者は困難事案が増えかねないと懸念する。県は12日、15日までとしていた「県医療ひっ迫警報」を2月5日まで延長すると決定。感染予防の徹底と救急の適正利用を引き続き呼びかける。
救急搬送困難事案は医療機関に受け入れ可能かどうか4回以上照会し、救急隊到着から搬送開始まで30分以上かかったケースを指す。県内の昨年12月以降の件数は【グラフ】の通り。県は年明け後の増加について、入院病床使用率の高止まりに加え、週に千人以上の医療従事者が感染や濃厚接触によって出勤できない状況が続くなど、医療機関の負荷の増大が背景にあるとみている。
福島市消防本部によると、雪が降ると、転倒で骨を折る患者が増える傾向にある。昨冬は1日30件の119番通報があった日もあった。冬場は心疾患や脳梗塞の患者も増える。消防本部の担当者は「コロナで医療が逼迫した状態でこうした通報が相次げば困難事案がさらに増えかねない」と危機感を募らせる。
福島市の済生会福島総合病院の岡野誠副院長(市医師会長)は「医療の現場は再び逼迫している。患者を受け入れたくても受け入れられない状況だ」と窮状を説明する。