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福島県塙町のベルファーム 「もったいない」で肉質向上 廃棄食材を和牛飼料に 持続可能な畜産へ地元連携

2023/05/01 09:50

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子牛にエコフィードを与える鈴木さん
子牛にエコフィードを与える鈴木さん

 全国に黒毛和牛を出荷している福島県塙町のベルファームは、廃棄予定の食材を混ぜた飼料を使用し、持続可能な畜産の実現に取り組んでいる。県内外の食品関連業者から日本酒の酒かすや大豆の皮などを仕入れ、外国産の飼料に加えている。世界的な物価高の中でも、餌の調達費は従来の半額に抑えられ、飼料の効果で肉質も向上した。県も酒かすを与えた牛のブランド化を目指しており、先行事例として注目を集めそうだ。


 ベルファームは塙町を中心に、いわき市や西郷村、群馬県などにも牛舎を構え、肥育と繁殖用の牛合わせて1290頭を飼育している。

 社長の鈴木立樹さん(48)にとって、環境に配慮した飼育の確立が念願だった。「大量に捨てられる食材を畜産に生かせないか」。そんな思いを抱き、牛を育ててきた。食品の製造過程で生じる廃棄食材を使った飼料はエコフィードと呼ばれ、資源を有効活用する上で重要視されている。25年ほど前からさまざまな食料品の残り物を配合し、エコフィード開発に試行錯誤を繰り返した。

 栄養バランスにこだわった。他社などのエコフィードは数種類の配合であるのに対し、ベルファームは約15種類。古殿町の豊国酒造の酒かす、郡山市の阿部製粉のそば粉に加え、カット野菜の端材などを取り入れた。食品関連業者も産業廃棄物として処理する費用を削減できる利点がある。

 牛の成長に応じた2種類のエコフィードを使い分け、成長を促す手法を確立した。うま味成分のオレイン酸を含む不飽和脂肪酸の値が高く、良質な肉質となった。出荷先の神戸市や東京都の食肉市場で高い評価を得て、県産和牛の平均価格と比べ約10%高く取引されているという。

 県によると、ベルファームのようにエコフィードを活用し、大規模に畜産業を展開しているのは珍しいという。

 鈴木さんは「自分が持っている情報は積極的に発信し、伝えていく。持続可能な畜産の取り組みが少しでも広がれば」と期待する。


■県産酒かす生かしブランド牛開発も

 県は日本酒の酒かすを生かしたブランド牛の開発に取り組んでいる。県産牛肉の取引価格が東京電力福島第1原発事故前の水準に戻らない中、全国新酒鑑評会で金賞受賞数9回連続日本一に輝いた県産日本酒の酒かすを与えた福島牛を売り出し、価格向上に結び付ける狙いがある。

 ベルファームも自社の牛の肉質を酒かすなどでさらに高め、ブランド力を向上させたい方針だ。鈴木さんは「行政やJAと連携して取り組んでいきたい」としている。