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【新型コロナ5類移行へ-医療機関】対策継続、病床確保へ 経営との両立課題

2023/05/07 09:09

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 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザと同じ5類に移行する8日以降、医療機関に厳密な感染対策、発熱患者や入院への特別な対応は求められず、個別の裁量となる。今後、感染拡大の第9波が到来するとの見方もある中、福島県内の多くの医療機関は感染対策の徹底を継続し、可能な限り専用病床を確保しようと検討を進めている。

 一方、国による診療報酬の特例措置や確保病床の補助金は9月末以降、縮小される見通しで、経営の観点から通常医療への段階的な切り替えも視野に入る。コロナ対策と経営をどう両立させるか―。現場の医療関係者は苦悩をにじませる。


■院内感染の懸念

 病院の全ての外来用入り口に自動体温測定器がある。来訪者に発熱があると、他の患者と接触しないよう、看護師らが特別診療室に誘導し新型コロナ感染の有無を検査する。福島市の済生会福島総合病院は、院内での感染対策を5類移行後も継続する方針だ。

 ただ、3月13日からマスク着用が個人の判断となり、マスクをせずに来院する人の姿も散見されるようになった。「暑くなり、マスクをする人が徐々に減っていくと予想される中で、院内感染のリスクは高まる可能性もある」。福島市医師会長で副院長の岡野誠さん(74)は病院側と来院者の感染症対策への温度差が生まれることを警戒する。8日以降も張り紙などで院内でのマスク着用を促す。


■補助金減額へ

 入院への対応も課題だ。同病院のコロナ専用病床は通常病床と隔離しており、現在、予備を含めて26床ある。医師、看護師らが専従やシフト制で対応するなど、多くの人員を割いている。季節性インフルエンザと同等の扱いになるとは言え、重症化リスクの高さや感染力の強さを踏まえ、専用病床を確保するのが理想という。

 だが、9月末には国からの休床補助金が減額される。「専用病床は確保したいが、経営者の見方で言えば、一般病床に戻すことも考えざるを得ない」。専用病床数を維持するか段階的に減床するかの検討を院内で慎重に進めている。

 県は8日から、入院対応を特定の病院から全病院に拡大する方針だ。新たに急性期の患者を受け入れる郡山市の土屋病院では病床確保に頭を悩ませる。日本感染症学会の指針では個室での対応が求められる。同病院の全99床のうち、個室は14床に限られる。担当者は「感染拡大時に、逼迫(ひっぱく)した状況をいかに招かないかが重要になる」と話す。


■外来受け入れ拡大

 県は5類移行に伴い、外来対応の医療機関も増やす計画だ。ただ、福島市医師会によると、受け入れに難色を示す施設も少なくないという。

 正当な理由のないコロナ患者の受け入れ拒否は医師法の応招義務に抵触する恐れがある。岡野さんは「院内感染のリスクを懸念する気持ちは分かるが、負担を分散するためにも協力をお願いしたい」と強調する。

 5類移行により、県や市の保健所を中心に担ってきた入院や搬送先の調整は、医療機関に委ねられる。これまでのコロナ禍では発熱患者の受け入れ先決定が難航するケースがあった。郡山医師会理事で感染症担当の松本昭憲さん(63)は「初めて対応する地域のかかりつけ医を含め、医療機関同士の緊密な連携、情報共有が欠かせない」と指摘。正確な症状の把握と伝達、足並みをそろえて地域医療を守る意識の醸成を求めている。

 県新型コロナウイルス対策本部の担当者は「5類移行に伴い、県民に混乱が生じないよう変更点を分かりやすく発信していく。通常診療に負荷が生じないように医療機関を支援していきたい」としている。