

朝日を浴びた木々の葉が黄色に輝いている。無数の落ち葉を踏みしめながら山頂に向かって歩みを進める。案内してくれたのは青木山を守る会の栗原孝明会長(73)。クマよけのために栗原会長が身に着けた鈴の音色だけが静かな里山に響いている。
青木山(奴田山、723・3メートル)は会津若松市街地の南東に位置し、長年、地域の里山として市民から親しまれている。環境省の生物多様性保全上重要な里地里山の一つに選ばれている。
急な山道をしばらく歩くとヒメシャガの群生地になる。ヒメシャガはアヤメ科の植物で5月ごろに淡い紫色の花を付ける。別称は花かつみ。登山道の両脇にヒメシャガの葉が広がっており、最盛期にはさぞ美しいだろうと思いながら歩いた。開けた場所に着いた。もみじ平と呼ばれているそうだ。その名の通り、モミジの木が並んでいる。美しく光る黄色の葉に囲まれながら一息つく。
緩やかな上り坂を進むと山頂手前で周囲を見渡せる場所に着いた。北に磐梯山、東に背あぶり山を望む。西側の眼下には雲が広がっていたが、しばらくすると徐々に薄れ始めた。会津若松のシンボル、鶴ケ城が姿を現した。景色などを楽しみながらゆっくり歩いたが、山頂には上り始めてから1時間半ほどで着いた。
山頂から南に少し進むと、妙見様とよばれる小さな祠(ほこら)があった。多くの先人がここで手を合わせてきたのだろう。積み重ねられてきた郷土の歴史に思いをはせた。
案内してくれた栗原会長にとって青木山は小学生の時に遠足で登った思い出の地だという。昔は子どもたちの遊び場でもあった。「まちから近く、気軽に四季の自然を楽しめる」とその魅力を語った。
文・横山雄介
写真・古川伊男
■なすびの一言
地元の青木山を守る会を中心に、ヒメシャガ観賞会など里山に親しむイベントが行われていると聞きます。地域で愛されている山のようですね。登ってみたいと思います。