鉄路と生きる

【鉄路と生きる(8)】第1部 磐越西線 優れた生活の足 実感 代行バスには不安も

2022/12/21 10:30

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雪が降りしきる中、代行バスに乗り込む耶麻農高の生徒ら=14日午後、JR山都駅
雪が降りしきる中、代行バスに乗り込む耶麻農高の生徒ら=14日午後、JR山都駅

 寒さが一段と強まり、雪が降りしきる喜多方市山都町のJR磐越西線山都駅。朝早くから、耶麻農高の生徒らが次々にバスを降りる。白い息を吐きながら徒歩約15分の距離にある校舎に向かう。

 8月の記録的大雨の被害を受け、JR東日本は不通区間を含む喜多方-野沢駅(西会津町)間で代行バスを運行している。1日に上下各13本が走る。

 「バス通学に慣れてきたけど、やっぱり列車の運転再開が待ち遠しい」。同校ライフコーディネイト科2年の田村羽夏(わか)さん(17)は山都駅を見詰め、つぶやく。

 喜多方-山都駅間が不通のため、田村さんは喜多方市塩川町のJR塩川駅で列車に乗り、喜多方駅で代行バスに乗り換える。自宅を出るのは以前と変わらず毎朝午前6時45分ごろ。ただ、学校に着くまでの時間は20分ほど長くかかる。下校時には代行バスから列車への乗り換えのため、喜多方駅で約1時間の待ち時間が生じる。「乗り換えの必要のない列車での通学が楽だったな」

 厳しい寒さが本格化し、積雪や路面凍結によるバスの遅れ・運休が発生しないか不安も募る。鉄路の良さを改めて実感している。

 喜多方市山都町の主婦佐藤美知子さん(74)は週1回、自宅近くの山都駅から隣駅の喜多方まで代行バスに乗る。主に食品や趣味の手芸用品の買い物に利用する。運転免許を持たないため、貴重な移動手段だ。所要時間は列車の倍の片道30分弱かかる。多少の不便さは感じるが、「バスが運行しているだけでも助かる。鉄道が再開するまで少しの辛抱」と前向きに捉える。

 長く日常的に利用していた磐越西線が不通になり、地域に公共交通網が整備されていることが「当たり前」と考える自分に気が付いた。「使えなくなって初めて、そのありがたみが分かった」


 山間部と市街地を結ぶJR磐越西線は通勤・通学や買い物、通院などの足として沿線住民の生活を支えてきた。それだけに、佐藤さんは赤字ローカル線の存廃を巡る協議の行く末に一抹の不安を抱く。地元は高齢者が多く、車を運転できなくなる人が増えることが予想される。路線はこれまで以上に重要さを増す。「鉄道が廃止されたら、高齢者は身動きが取れなくなってしまう。国やJRには、地域の実情に見合った方策を議論してほしい」と訴える。