鉄路と生きる

【鉄路と生きる(30)】第3部 磐越東線 高校統合と“二重苦” 小野町 住民意識 醸成課題

2023/02/23 09:30

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乗降客の少ないホームを見詰め、路線のあり方に思いを巡らす二瓶さん=JR小野新町駅
乗降客の少ないホームを見詰め、路線のあり方に思いを巡らす二瓶さん=JR小野新町駅

 JR東日本が公表した利用者の少ない赤字区間の沿線自治体では、鉄道が廃止された場合、地域の衰退を加速させるとの懸念が広がる。中でも、磐越東線小野新町、夏井の両駅がある小野町は、地域の将来に関わる“二重苦”が大きな問題として浮上している。町内唯一の高校である小野高が2026(令和8)年に田村市の船引高に統合され、創立80年以上の歴史に幕を下ろす。さらに、鉄路をこのまま存続できないとなれば、町から二つのシンボルが姿を消すことになる。関係者は「活気を守るために、鉄道は何としてもなくせない」と危機感を抱く。

 2月中旬、日曜日の午前中。小野新町駅にいわき発の列車が着くが、乗降する人はほとんどいない。「昔に比べて利用者は減ってしまった」。小野高同窓会副会長で町観光協会長の二瓶晃一さん(61)が、人けのないホームを見詰めてつぶやく。

 磐越東線は小野新町駅を境に、いわき駅方面の区間が赤字に該当する。JR東によると、2021(令和3)年度の1キロ当たりの1日平均乗客数は小野新町-郡山駅間が1809人だったのに対し、いわき-小野新町駅間は200人と、9分の1しかいない。二瓶さんは採算性を基に再編の議論が進めば、郡山-いわき駅間をつなぐ85・6キロの鉄路が途切れかねないと懸念を示す。

 磐越東線はかつて高度経済成長を支える貨物輸送で栄えた。現在、いわき駅方面の利用者が減ったとはいえ、生活の足として欠かせない住民がいる。「鉄道の成り立ちからしても、1本の線路がつながっていることに意味があり、何より重要だ」と語気を強める。

 小野高の統合を巡っては、地域活性化や人材育成に高校は欠かせないとして、町や小野高同窓会などが存続を強く求めてきた。二瓶さんは同窓会副会長として母校の存続を訴える中で、「学校統合とローカル線再編は根本的な課題が共通している」との思いを抱いた。

 いずれの問題も、少子化や人口減少が背景にあるものの、地域の未来に関わる懸案に対する地域住民の関心の低さが根底にあると感じている。地元からなくしてはならないと受け止めつつ、「つい人ごととして考えてしまいがち」と指摘する。

 二瓶さんは「町民が鉄道の重要性を再認識し自分事として行動しなければ、小野高統合と同じ道をたどる」と警鐘を鳴らす。その上で、「一人でも多くの人が鉄道との接点を持つ仕掛けが必要。各地域とJRがウィンウィン(相互利益)な関係をつくるためには何が必要か、活発に意見を交わすべきだ」と提言する。