
福島、山形、新潟の3県知事は地方路線を含む国内の鉄道網を国策として維持する方策を検討するよう国に要望する。20日、新潟県佐渡市で開いた3県知事会議で決定した。JR只見線や米坂線など豪雨災害に伴う不通経験を持つ3県として地域住民や観光客らの移動を支える鉄路の重要性を訴え、路線存続に向けた制度構築などを求める。
鉄道を巡ってはコロナ禍に伴う利用者の激減によりJR各社の経営状況が悪化し、JR磐越西線や只見線など多くの地方路線の赤字が明らかになった。4月には地域公共交通の再編に向けた関連法が成立。経営難の地方鉄道の存廃について自治体や事業者が参加する国主導の「再構築協議会」の制度を盛り込んだ。国土交通省は今年度、沿線地域の実証事業などを財政支援する予算を確保している。
だが、再構築協議会の設置は沿線自治体や鉄道事業者からの要請が前提となる。財政支援では「上下分離方式」やバス転換の検討を促すなど、鉄路の維持を目的とした仕組みは十分ではない。日本海側から太平洋側まで県境を越えて鉄道網でつながる3県は、住民の通勤・通学、観光客の移動に加え、災害時の物資輸送などの観点から鉄路の維持・確保の重要性を強調。沿線自治体や事業者などの地域任せにせず、国が主体的に鉄道網を維持する姿勢を示すべきだとの考えで一致した。
路線の存続に向けた利用促進策などに活用できる支援策に加え、国主導の対策を講じることなども求める。路線の在り方を巡る議論には期限を設けず、地域の声を受け止め、地元が納得できる結論を丁寧に取りまとめる必要性も訴える。
各県知事は会議終了後、報道陣の取材に答え、新潟県の花角英世知事は「鉄道を広域ネットワークとしてどう考えるのか、(国に)もう少し前に出てもらいたい」と国としての考えを明確にするよう求めた。福島県の内堀雅雄知事は県内路線の維持を改めて強調した上で、「地方自治体が鉄道の存続のために対応しやすい制度構築が重要との思いを3県で連携し、国に届けたい」と述べた。
山形、新潟両県を結ぶJR米坂線は昨年8月の豪雨災害以降、復旧の見通しが立っていない。山形県の吉村美栄子知事は「鉄道網全体を考える視点で、復旧・復興に向けて考えてほしい」と話した。
■3県観光モデルコース設定検討
福島、山形、新潟の3県は鉄道などを活用して各県を巡る観光のモデルコースを設定する方向で検討に入る。新型コロナウイルスの法的位置付けの引き下げに伴い、3県の連携を強化し、誘客促進を目指す。3県知事会議で合意した。
2021(令和3)年度、各県や観光協会でつくる「三県観光連携促進会議」を発足させたが、コロナ禍の影響で、周遊ルートの形成など十分な活動ができていなかった。今年度を観光復活に向けた重要な年と捉え、広域的な観光ネットワークづくりを進める。
モデルコースの詳細は今後協議するが、互いの県をつなぐ鉄道、各県に立地する空港などを活用するとともに、3県共通の地域資源を生かす内容などを想定している。