【放射線対策(下)】道路除染 コストが課題 有効な技術は判明 国ガイドラインの対象外

 東京電力福島第一原発事故で拡散した放射性物質は建物や道路、森林、農地など広範囲に付着した。その除去作業は国内で前例がなく、十分なノウハウは蓄積されていない。県や日本原子力研究開発機構(JAEA)は実証試験を通し、土木分野や農作業で使われていた技術を応用しながら効果を探ってきた。舗装面の除染では一定の効果を確認したが、依然、コスト面などの課題が残る。新たな技術を開発し、普及させるのは難しいのが現状だ。

■ショットブラスト
 「一様に高い除染効果が得られた」。平成23年度の除染技術実証事業で県が高く評価したのが、「ショットブラスト」だ。機械で直径1ミリ程度の鉄球を舗装面に打ち付け、ミリ単位で削る。舗装表面の放射線量は95%以上減少した。道路などの公共工事で表面処理に使われていた技術で、特殊な改良が不要なため、現場に導入しやすいメリットもある。
 一方、JAEA福島技術本部の研究者は「道路のわだちなど凹凸がある部分を均一に削ることができない」と指摘する。回収した粉じんの放射線管理、作業者の防護も必要となる。
 導入には高額な費用もネックとなる。県内の民間事業者によると、ショットブラストを使うには機器や使用する鉄球の導入費、粉じんの処分費用などが生じる。1平方メートル当たりコストは、高圧洗浄の10倍近い6000円程度かかる見通しだという。県は「線量が高い部分でスポット的な活用を促したい」としている。

■高圧洗浄機
 原発事故の直後、高圧洗浄機を使った除染作業が注目を集めた。だが、県とJAEAは「高い効果は得られない」と否定的な見方を示す。
 県の実地試験では、アスファルト舗装面の表面線量の減少率は40~60%程度。ショットブラストと比べ、十分な効果は得られなかった。舗装面などに強固にこびりついた放射性物質は、高圧の水では洗い落とせない。さらに、洗剤を併用しても効果は高まらなかった。水を大量に使うため、汚れた水の回収も課題となる。
 一方、JAEAは「超高圧」の水で舗装面を削り取る超高圧水除染は効果があるとみている。水圧は約200メガパスカルにもなる。一般に市販されている10メガパスカル未満の高圧洗浄機の20倍以上だ。県の実地試験では超高圧水で表面線量を80%以上減らすことができた。
 ジェル状の特殊な素材を構造物に塗り、乾燥させて剥がす「はく離剤」も表面線量を80%以上減らすことができた。公園の遊具など立体的な構造物、凹凸や亀裂がある場所の除染に効果が期待できる。作業に伴い汚染物が拡散する心配もない。
 ただ、水に弱い性質があり、作業時の降雨対策が求められる点やコストが高いことが課題だ。民間事業者は「乾燥に24時間ほどかかるため、屋外での使用は難しい。素材の費用は1平方メートル当たり1万円程度かかる」と指摘する。

■事前協議が必要
 ショットブラストやはく離剤は県の実地試験で効果が確認されたが、環境省の除染関係ガイドラインに使用が明記されていない。このため、市町村が除染に導入する場合、環境省との事前協議が必要となる。協議に時間を要して除染が遅れる懸念がある上、認められなければ費用は市町村の全額負担となる。
 県は試験結果を環境省に通知し、ガイドラインに盛り込まれるよう求めている。
 環境省はガイドラインを随時、見直す方針だ。ただ、環境省除染チームは「県やJAEA、農林水産省などが行った実証試験の結果について効果、効率、費用の観点から精査している段階」としており、「第二版」の公表時期は不透明だ。

※除染の実証試験
 県は平成23年度、除染技術実証事業を実施した。民間から除染技術を公募し、3月に構造物や土壌の実地試験19件の結果を取りまとめた。環境省に示し、除染関係ガイドラインに反映させるよう求めている。除染技術の開発、普及の促進に向け平成24年度は2回の実証事業を行う。1回目は5月中に公募する予定だ。一方、日本原子力研究開発機構は平成23年度に警戒区域などで除染モデル実証事業を展開した。内閣府は事業の結果を踏まえて今後、最終報告をまとめる方針。