放射線 放射性物質 Q&A 水道水、放射性物質の影響は
毎日使うだけに、水道水をはじめとして水の問題に特に関心があります。東京電力福島第一原発事故後には県内や関東地方などで水道水から放射性物質が出て話題になりました。何か影響はあったのでしょうか。
【回答者】県放射線健康リスク管理アドバイザー・長崎大大学院教授(放射線医療科学専攻) 高村昇さん
■溶けやすいヨウ素が検出 日本人は元来過剰に摂取
原発事故直後、水道水から放射性ヨウ素が検出されました。一般的にヨウ素が水に溶けやすいという性質を持っているためです。
ヨウ素は体内に入ると甲状腺に集まりやすいという性質があり、大量の放射性ヨウ素が体内に入ると甲状腺に集まります。そこから放射線が出て、甲状腺が被ばく(内部被ばく)します。
国内では甲状腺の内部被ばくで甲状腺がんのリスクが上昇するのを防ぐため、事故直後に暫定基準値が設定され、放射性ヨウ素による被ばくを最小限に抑える対策が取られてきました。
元来、日本人は世界でも珍しい「ヨウ素を取り過ぎている(ヨウ素過剰)」の状態にあります。昆布やワカメなど、ヨウ素を大量に含む海藻類を常食としているからです。
普段は余り昆布を意識して食べていないという人でも、昆布でだしを取ったみそ汁や煮物などとして、自然に多く摂取しているものです。実はこの昆布だしの中には多量のヨウ素が昆布から溶け出しています。このことからも、ヨウ素が水に溶けやすい、ということが分かります。
ヨウ素の沸騰する温度(沸点)は水より高いので、煮沸したからといって放射性ヨウ素を取り除くことはできません。事故直後にも井戸水からは、あまり放射性ヨウ素は検出されませんでしたが、これはほとんどの井戸にはふたがしてあったためで、原発事故直後に放射性ヨウ素が降ってきてもブロックされていたのです。