古里で最後の見送りを 1年ぶり葬祭場再開「尊い仕事」と実感

町民の声に後押しされ葬祭場を再開した大和田さん

 ■広野の「セレモニーホールふたば」社長 大和田 雅一さん(40)

 東日本大震災で被災した広野町上北迫の葬祭場「セレモニーホールふたば」は3月、約1年ぶりに再開した。社長の大和田雅一さん(40)は「『古里から送り出したい』という遺族の思いにようやく応えることができる」とほっとした表情だ。
 震災後、東京の末弟宅に両親と妻、小学生の長女の5人で避難した。その後、多くの町民が身を寄せていた埼玉県三郷市の避難所に家族3人で移った。両親はいわき市内の2次避難所に移動した。
 三郷市の避難所で暮らす中、「町で葬式を出したい」「(葬祭場は)いつから始まるのかな」という声が届いた。石こうボードのつるし天井や照明が落ち、白い煙がモウモウと立ち上っていた"あの日"の式場の様子を思い出した。「火葬を済ませて待っている人もいる。早く修復して再開しよう」。古里に思いを寄せる町民の声に後押しされた。
 昨年9月、広野町は緊急時避難準備区域が解除された。災害対策特別資金を使って10月から葬祭場の改修を進め、ようやく準備が整った。建物周辺の除染作業も行った。3日、4日には再開後初めての通夜と葬式を無事終えることができた。あらためて尊い仕事だと感じた。
 避難先での葬儀では隣近所や知人らの参列が難しい場合がある。地元で葬儀を行うことで、隣近所が久しぶりに顔を合わせる機会にもなると考えている。「町民がマチに戻るためにはなくてはならない仕事だと思う。これまで以上のお手伝いをしていきたい」と誓っている。