新天地白河に作業場 大堀相馬焼伝統守る 温かな支援で決意

白河での窯再開を決め制作に励む山田さん=陶芸の杜おおぼり二本松工房

■浪江の窯元いかりや商店 山田慎一さん(42)

 「ゼロからのスタート。新たな場所から一歩ずつ進んでいきたい」。浪江町の大堀相馬焼の窯元「いかりや商店」が白河市大信の堂山業務用団地に作業場を移す。店主の山田慎一さん(42)は家族の将来を考え、避難先での温かな支援に背中を押され、白河での窯再開を決意した。
 いかりや商店は江戸時代から続く伝統ある窯元で山田さんは13代目。山田さん家族は東日本大震災と東京電力福島第一原発事故で一度県外に避難し、平成23年6月に白河市に移った。昨年夏から大堀相馬焼協同組合が二本松市に設けた陶芸の杜おおぼり二本松工房の共同作業場で少しずつ仕事を始めた。
 一方で山田さんは伝統の窯再開に向け、場所選びなどの準備を進めてきた。何度も市役所を訪れて相談する中で、親身になって対応してくれる職員に勇気づけられることがしばしばあった。鈴木和夫市長と面談した際には「伝統を守るため、思う存分陶芸に打ち込んでほしい。市も最大限応援する」と激励を受けた。市内の小学校に通う長男と長女が生活になじみ、学校で多くの友人に囲まれていることも大きな判断材料となった。
 市から業務用団地の土地を借り、大堀相馬焼協同組合と浪江町を通じて中小企業基盤整備機構に作業場建設を申請。完成した作業場を町を通じて5年間借りることで話がまとまった。敷地面積は約1400平方メートル。作業場の着工・操業予定は調整中だ。
 新たな作業場にはガスと電気の窯を新たに設置する。「これまでは大堀相馬焼という立地とブランドに守られていたが、これからはそうはいかない」と山田さん。地道に小さな仕事を積み重ねながら、地元の人たちに親しんでもらうことから始めるつもりだ。さらに「子どもたちのために陶芸教室を開きたい」と新天地・白河に少しでも貢献したい考えだ。