また気軽に集まれる店に あすオープン 友人ら後押し

新調した制服で笑顔を見せる五十嵐さん夫婦

■原町に理容店 五十嵐利浩さん(52)理枝子さん(49) 夫婦

 南相馬市小高区で「ヘアーサロンいがらし」を営んでいた五十嵐利浩さん(52)、理枝子さん(49)夫婦が同市原町区のJR原ノ町駅近くに新たな店舗を構え、13日に営業を再開する。肉親との死別を乗り越え、2人は気持ちも新たに一歩を踏み出す。
 利浩さんは小高区で昭和5年から続く老舗の理容店の3代目。小高商高卒業後、父・利夫さん(80)の下で理容師としての一歩を踏み出した。63年には原町区出身で千葉県で理容師として働いていた理枝子さんと結婚し、一男一女に恵まれた。店には夫婦の気さくな人柄を慕う常連客が足しげく訪れた。
 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故が相次いで発生し、家族は福島市の友人宅や神奈川県の親戚宅へ避難した。
 津波は理枝子さんの両親の命を奪った。失意の中、避難生活を続けていた2人に東京で理容師の修業をしていた長男・祐介さん(22)が声を掛けた。「前向きな気持ちで働いてみたら」
 息子の言葉に力をもらった2人は23年7月、再びハサミを握った。利浩さんは都内の杏林大付属病院の理容室、理枝子さんは参議院議員会館の美容室でそれぞれ腕を振るった。25年正月、小高区の相馬小高神社に初詣した2人は多くの常連客や友人と再会した。「店が開くのを待ってるね」「楽しみにしてるよ」。店の再開を期待する声が寄せられた。みんなの声に応え、4代目を目指して奮闘する長男のために地元での再開を決めた。
 親友の紹介で原町区に物件を見つけ、7月から県の補助金などを活用しながら店舗の改装に取り組んだ。今月2日、原町区の雇用促進住宅に移り住み、オープンに向けた準備を続けてきた。2人は「たくさんの支えがあって、やっとここまでこられた。また、お客さんが気軽に集まれる店にしたい」と前を向く。
 営業時間は午前9時~午後6時半。定休日は毎週月曜日と第1月、火曜日、第3日、月曜日。電話での予約も受け付ける。問い合わせは同店 電話0244(26)7475へ。