死亡率震災前の2・4倍 特養施設などで増える

 東京電力福島第一原発事故で避難を強いられた県内の特別養護老人ホームや介護老人保健施設など34高齢者施設の事故当時の入所者1766人のうち、1月1日現在で約30%の520人が死亡したことが1日、県のまとめで分かった。34施設では震災前と比べて、死亡率が2.4倍に増えたとする専門家の分析もあり、原発事故の避難に伴う、いわゆる「原発事故関連死」が、要介護者ら災害弱者に顕著に表れている。

 県は福島第一原発から半径20キロ圏内で避難指示が出された警戒区域の17施設、20~30キロ圏内で屋内退避指示が出された緊急時避難準備区域の11施設、30キロ圏周辺の6施設の計34施設の1766人を対象に、約3カ月ごとに死者、退所者、避難者、再開した施設の入所者を集計している。

 1766人の要介護度はさまざまだが、学校体育館や公共施設などに一次避難した後、県内外の別の施設や病院に移った人が多い。

 死者数の推移は【図1】の通り。避難から約3カ月後の平成23年6月1日までの死者は168人で全体の32・3%に上る。県は移動の負担、医療の欠如などのため体調を崩し、避難直後に死亡したケースが多かったとみている。一方、25年1月1日までのその後の1年7カ月では352人が死亡しており、避難時の体調悪化などを抱えたまま避難先の施設で死期を早めたと考えられる。

 1月1日現在の県内外の施設などへの避難者は643人、再開した施設への入所者は454人。病院や自宅などに移った施設退所者は149人いるが、既に死亡した人も含まれているため、死亡者の実数は520人より多いとみられる。

■死因の4割が肺炎

 福島医大公衆衛生学講座の安村誠司教授が、県の調査対象となった34施設の震災後8カ月の死者数を分析したところ、震災前の2・4倍だった。

 死亡率の推移は【図2】の通り。23年3月から10月までに亡くなったのは295人で、前年同期の109人と比べると、津波による犠牲者32人を除いても、入所者千人当たりの死亡率は2・4倍だった。

 死者は75歳以上が90%以上。65歳以上の高齢者の死因に占める肺炎の割合は通常10%程度だが、40%以上を占めた。安村教授は寒い時期に体育館などで寝泊まりして体調を崩すケースや、冷たく固い食事が誤嚥(ごえん)性肺炎を引き起こした場合もあったとみている。安村教授は「避難に伴う移動のリスクで、元気だった人も犠牲になったと考えるべき」としている。