(3)都路・避難指示解除1カ月 かつての絆 少しずつ

東京電力福島第一原発事故に伴う避難指示が解除された田村市都路町東部は山あいに位置する。住民登録者(3月末現在)は117世帯、355人。地見城(じけんじょう)、合子、場々、荻田の4つの集落からなり、行政区だと都路町8区と同9区に分かれる。市は帰還した住民の数を正確には把握していないが、4月末までに自宅に戻ったのは全体の4分の1の30世帯前後とみている。
4月26日、地見城集落の集会所で花見が催された。原発事故前からの恒例行事ではない。「3年余りの避難生活で住民のつながりが薄れつつある」。地見城集落を含む都路町9区の副区長を務める根内昌美さん(62)が、住民の絆を再確認する場にしようと企画した。県外に避難している住民を含め、約30人が集った。
住民を満開で迎えた集会所の桜は、半世紀以上前に集会所の完成を祝って先人が植えた。地見城集落は、平成17年に市町村合併する前の旧都路村時代からスポーツや行事を通して住民の結束力の強い地域だった。
根内さんは4つの集落の中でも地見城集落は帰還意欲が高いと感じていた。だが、自宅に戻ったのは38世帯のうち、13世帯と3分の1にすぎない。その大半は特例宿泊を利用して避難指示解除前から自宅で暮らしている住民だ。ここ1カ月で新たに帰ったのは2世帯にとどまるという。
自宅の修繕の遅れや放射線への漠然とした不安、生活環境の変化など、帰還をためらう事情は人それぞれ異なる。しかし、根内さんは「仲間同士が和やかに、支え合って暮らす雰囲気をつくれれば、帰還を選ぶ人が増えるのではないか」と考えている。先人から受け継がれてきた地域コミュニティーを取り戻すため、今後は地域を挙げてのクリーン作戦や神社の夏祭りの復活などを思い描く。
「急がず、慌てずに取り組んでいけばいいんだよな」。根内さんは咲き誇る桜を見詰めながら、自らに言い聞かせた。
=「都路・避難指示解除1カ月」はおわります=
