「相双連合」心の支え 会社員 中村公平さん 22 郡山

■夏の大会「最後に思い出」
全国高校野球選手権福島大会2日目ー。
8点差を追う7回裏。双葉翔陽、富岡、相馬農でつくる相双連合の4番中村公平選手(3年、富岡)は内角直球を振り抜いた。乾いた金属音を残し、白球は夏空に舞い上がり、左翼席で大きく跳ねた。
「つらいこともあったが、最後にいい思い出ができた」。夏の日差しが、祝福するかのように笑顔を照らした。
【平成23年7月15日付・社会面】
郡山市の郡山イーストジャパンクラブでプレーを続けている。発足から間もなく三年の若いチームだが、2年連続で都市対抗野球東北大会に出場した。今季から主将を任された。地元に愛されるチームを目指している。地域に感謝し、ともに歩むという姿勢は相双連合で学んだ。考え方は今就いているサービス業にも通じる。どれもあの日の一打につながっている。
■「当たり前の日々に感謝」
恵まれた練習環境に憧れて富岡高に進んだ。原発事故で古里の郡山市に戻り、卒業後に就職した。
社会人となり一度はバットを置いた。高校時代で燃え尽きた感じがした。未練はないと思っていた。
新しいチームができる。一緒にやらないかー。ある時、郡山リトルリーグの恩師に誘われた。正直、乗り気じゃなかった。だが、泥にまみれて白球を追ううちに気付いた。
「野球が好きだ」
当たり前に野球ができるありがたみを忘れていたのかもしれない。相双連合には震災と原発事故でチームがばらばらになったにもかかわらず、夏の大会に出たいという思いで別々の高校から仲間が集まった。みんなが野球へのいとおしさと感謝の気持ちを感じながらプレーしていた。
■「富岡に明るい話題を」
今は全国大会での活躍を目標にしている。クラブチームの躍進で県内の野球界を盛り上げ、競技人口を増やしたい。
富岡高時代にお世話になったアパートの大家さんたちは今も避難生活を送っている。野球には夢がある。みんなを元気にする力がある。苦しい境遇でもプレーし続けた自分たちがそうであったように。良い成績を収めていつか富岡の人たちに明るい話題を届けたい。
諦めなければ必ず結果は出る。仲間と闘ったあの夏を忘れない。
