「霞が関」の都合(1) 進まぬ中間貯蔵整備 環境省でいいのか

自民党東日本大震災復興加速化本部長の額賀福志郎をはじめ閣僚経験者ら数人が1月上旬、国会内の一室に集まった。いら立ちをあらわにしていた。「中間貯蔵施設の用地取得に時間がかかりすぎている。政治主導で加速させないとだめだ」。環境相・丸川珠代と環境副大臣・井上信治を呼び出し、強い口調で迫った。
丸川は公務のためほどなく退席し、井上が一人残った。環境省として何をすべきか、意見を交わしたとみられる。約1時間半にわたるやりとりを終え、井上は厳しい表情のまま出迎えの車に乗り込んだ。
平成26年9月に県が中間貯蔵施設の建設受け入れを政府に伝え、環境省は地権者との用地交渉に着手した。大熊、双葉両町にまたがる建設予定地の地権者は2365人。1年五カ月が過ぎた1月末で土地売買か地上権設定の契約に至ったのは44人で全体の2%に満たない。
環境省は中央官庁が立ち並ぶ東京・霞が関にある。東京電力福島第一原発事故の発生後、除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設の整備を担当している。主に自然環境保護や地球温暖化対策を担う同省にとって、用地取得は未知の分野に近い。地権者との交渉にたけた職員は皆無に等しい。
県や民間企業の退職者ら用地取得経験者を任期付きで採用したが、専門的な知識を持つ人材の確保は容易ではない。経験の浅い担当職員が一部の熟練者から手ほどきを受け、業務に当たっているのが実情だ。
省内からも用地取得の劇的な加速化は困難との見方が出ている。中間貯蔵施設チーム次長の高村裕平は「現場の職員は頑張っているが、熟練者を含め、人手が足りず作業が進まない」と頭を抱える。
中間貯蔵施設建設は復興の最重要課題だ。県内各地の仮置き場や一般住宅に保管されている汚染土壌の1日も早い運び込みが求められている。にもかかわらず遅々として進まぬ計画に、与野党を問わず県関係国会議員から苦々しげな声が漏れる。「そもそも専門外の環境省が用地交渉を担うこと自体に無理があるんじゃないか」
丸川は政治主導を求められてから約1カ月後の今月5日、閣議後の記者会見で用地取得加速化へ決意を口にした。
国は東日本大震災と原発事故で被災した県民を支え、県土を再生するため数々の復興施策を展開してきた。しかし、震災から5年を迎えようとしても多くの課題が積み残されたままだ。行政の仕組み、法律など数多くの障壁が立ちはだかる。今、国の姿勢が問われている。(文中敬称略)