「霞が関」の都合(10) 短期異動が足かせ
「政府の人事は長くて2年。この5年間、福島の問題に継続して向き合ってきた人は私の知る限り1人だけだ。復興庁の事務次官以外はみんなポジションが変わった」
今月9日、福島市内で開かれた県中小企業団体中央会の会合で講演した知事の内堀雅雄は「(新任者に)今の福島はかくかくしかじかと話さないといけない。大臣もそうだ。本当は会った瞬間から『この仕事をどうするか』という話がしたい」と続けた。普段と同じく口調は穏和だが、言葉の重さが違った。
閣僚のみならず、復興関係の官僚も次々と代わる。政府内でも風化が進んでいるのではないか。内堀の発言からは、そんな危機感がにじむ。
双葉郡などの被災市町村からも復興庁に対して同様の疑問の声が上がる。担当職員が地域の現状を深く理解し、意思疎通が円滑にできるようになっても、通常2、3年で中央省庁に復帰してしまうためだ。
復興庁は「同じ部署に長く配置しないのが国家公務員の人事システム」と説明する。福島復興局では被災12市町村などの各担当職員を複数体制にして異動時期をずらしたり、前任者の出身省庁から後任を配置したりして、引き継ぎで支障が生じないよう対応しているという。同局は「福島で経験を積んだ人材がそれぞれの省庁に戻ることで、政府全体の連携が取りやすくなるという側面はある」と釈明する。
東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から丸5年が経とうとする今も、帰還困難区域などは避難指示解除の見通しが立っていない。復興には長期的な視点が必要不可欠だ。
避難区域を抱える町の担当者は「霞が関の人事のルールは被災地の現状と懸け離れている。短期の異動では復興事業が場当たり的になりかねない」と懸念を示す。
実際、現場では復興加速の支障となるようなさまざまな問題が生じている。(敬称略)