今を生きる 恩返しのタスキリレー 苦難越え力走

県大会の大舞台で力走した磯部中

【県中学駅伝出場 磯部(相馬)特設部】
 5日に西郷村で開かれた県中学校体育大会駅伝競走に被災地から出場した相馬市の磯部中は、33位だったもののベストタイムをマークする力走を見せた。練習を見守ってくれた周囲の思いを心の支えに、全員でタスキをつないだ。
 東日本大震災と津波で磯部中の生徒は6人が死亡、同校に通う生徒の中には家が被災したり家族を失ったたりしたケースも多い。駅伝選手の多くは仮設住宅で暮らす。こうした状況を受け、相双地区では今年は予選を実施せず、男子5校、女子4校が地区推薦の形で県大会に出場した。
 磯部中は夏に特設駅伝部で練習を始めた。これまでの練習コースが津波で使えなくなったため、学校近くに手頃な坂路を見つけ新しい練習コースにした。全長3キロのゴールは仮設住宅。毎日の練習では選手が仮設住宅目指して息を切らして飛び込んでくる。そんな選手たちに仮設住宅の住民が声援を送った。声援を励みに練習を重ね、タイムを伸ばす選手も出始めた。
 本番で選手は降りしきる雨の中を力走、中継所では声を掛け合い、がっちりとタスキを受け継いだ。アンカーの蛯原司君がゴールを駆け抜けた。
 監督の堀川智秋教諭は「目標タイムを突破したことで、練習を応援してくれた皆さんに少しは恩返しができたと思う」と選手の頑張りをたたえた。主将で1区を走った鈴木克哉君は「大会に出られない他のチームの分も背負って走った。この仲間とレースができて本当にうれしい。これからの自分にとって大きな財産になる」と充実した表情で語った。