今を生きる 憩いの喫茶店再開 店名「レインボー」、味もそのまま 決意胸に二人三脚

■武内一司さん 久美香さん 大熊から若松に避難
大熊町で喫茶店を営んでいた武内一司さん(58)、久美香さん(51)夫妻は5日、避難先の会津若松市で再び喫茶店をオープンさせた。店名は大熊町の店舗と同じ「レインボー」。再出発した2人は「町民、市民の憩いの場にしたい」と声をそろえる。
大熊町生まれの一司さんは昭和53年、25歳でレインボーを開店させた。61年に久美香さんと結婚して以降は二人三脚で歩んできた。町内で唯一の喫茶店として親しまれ、モーニングからディナーまで多くの来店者でにぎわった。
いつも通りだった3月11日、ランチタイムが落ち着いたころに地震が起きた。店内は皿やグラスが散乱したが、大きな被害はなかった。すぐに再開できると考えていた矢先に東京電力福島第一原発事故が発生。状況も分からないまま12日に避難した。
避難生活は目的もないまま過ごす日々が続いた。まだ体力的には余裕がある年齢。「何もしないではいられない」。2人の考えは同じだった。どちらからということもなく再出発を決意。町商工会の協力を得ながら開店に向けて準備してきた。
新しいレインボーは会津若松市湯川町1の58のビル2階にできた。竹田綜合病院の目の前で、9月末で閉店した喫茶店を受け継いだ。大熊町の店舗よりも1回り狭くなったがメニューはほぼ同じ。焼き肉やフライなどボリューム満点の「レインボーランチ」はそのままだ。壁に掛けられた絵は大熊町の店舗から持ってきた。
オープン以降、再開を聞き付けた町民が訪れ、大熊町を懐かしみながら飲食している。病院利用者ら市民の利用も多く、滑り出しは上々。「一生懸命やってきて良かった」と一司さんは話す。「会津若松でも地元の人から愛される店にしたい」。2人の目標は歩みを共にした25年前と同じだ。同店の電話番号は0242(28)2277。