今を生きる 文化祭、希望の懸け橋に 合唱、演劇あす披露

秋桜祭で発表する全校生合唱の練習に励む浪江中の生徒

■二本松 浪江中生、避難先で心一つに練習
 「夜明けの来ない夜はないさ...」。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故で被災した人々に呼び掛けるように歌い出す。避難生活を送る浪江中の生徒が歌う「瑠璃色の地球」。3日に開催する同中学校の文化祭「秋桜(こすもす)祭」に向け、練習に励んでいる。
 浪江中は、町が役場機能を移転した二本松市の旧針道小を借りて8月25日に開校した。当初33人だった生徒数は徐々に増え47人になった。再開し2カ月余り。伝統の「秋桜祭」を企画・運営することで、個々の役割を果たす自主性や責任感、仲間との協調性を育てようと実施を決めた。
 「輝け!浪江の虹~浪中生は虹のピース」がスローガン。虹は友情、絆、協力、勇気、団結、志などの結晶だ。その基になるピースの生徒一人一人の力が成功への道としている。全員が140枚の画用紙に貼り絵や着色をし、スローガンに合わせたビッグアートを作っている。当日午前9時からのオープニングセレモニーで披露する作品は古里の復興を誓う思いも込めた。
 秋桜祭では全校生のほか教職員の合唱、生徒の演劇発表などもある。震災後、茨城県に避難し、浪江中の再開を知り戻って来た天野祥司君(15)=3年=は「規模は小さいけれど今、みんなができることを精いっぱいやる。ビッグアートにも描いた虹は明日への希望の懸け橋」と胸を張る。
 震災前は約400人の生徒がいた。避難先の他校に通っている中には「秋桜祭をぜひ見たい」と訪れる生徒もいるという。井上恭一校長は「来年以降、新たな生徒が入るかは未知数だが、みんなが元気を出して学べる環境づくりに尽くしたい」と語っている。