【県内自治体の仮置き場問題】 除染ごみ どこに 「協力したいが安全は...」 住民感情は複雑

地域住民による除染活動の活発化で、県内自治体が仮置き場の対応を迫られているが、住民理解が得られず、設置場所の選定が進んでいない。福島民報社の県内59市町村への聞き取り調査で、仮置き場について「検討中」としている自治体は23市町村に上るが、ほとんどが実現のめどは立っていない。各自治体は「最終的な処分先が明確でなく、いつまで仮置きされるのかを不安に思う住民の理解が得られないと」訴え不、法投棄の横行も懸念する。
■ジレンマ
仮置き場の設置が進まない背景には、複雑な住民感情がある。
今月6日夜、伊達市霊山町小国地区の下小国地区中央集会所に町内会の役員が集まった。市は10月にも特定避難勧奨地点や、その周辺を含む約150世帯の民家除染に乗り出したい考えだが、それで出たごみの仮置き場の設置場所が大きな課題となっている。
「設置場所を提案してほしい」。市の求めを受け役員は夜遅くまで対応を協議したが、「国が処分方針がないのに決められない」「万が一、何かあったら責任は取れない」と結論は先送りされた。
二本松市も支所、住民センター単位で市内17カ所に仮置き場を設置する予定。各地域で説明会を実施し、住民側に設置場所を協議するよう求めている。今月16日までに各地域から回答をもらい、なるべく早く設置したい考えだ。
県は除染などで発生した廃棄物の仮置きについて、土を20~30センチかぶせたり、コンクリートの遮蔽(しゃへい)物内に保管する方法を示している。だが、簡易な方法のため、住民の安心を確保するには不十分、との指摘もある。二本松市のある行政区の関係者は「正直、周辺では設置に反対の声が多い。除染に協力したい気持ちはやまやまだが、仮置きがいつまでなのか分からず、本当に安全かどうかも分からない。住民の安全安心を考えると、いい返事はできない」と本音を明かす。
地域住民による除染活動の活発化で、県内自治体が仮置き場の対応を迫られているが、住民理解が得られず、設置場所の選定が進んでいない。福島民報社の県内59市町村への聞き取り調査で、仮置き場について「検討中」としている自治体は23市町村に上るが、ほとんどが実現のめどは立っていない。各自治体は「最終的な処分先が明確でなく、いつまで仮置きされるのかを不安に思う住民の理解が得られないと」訴え不、法投棄の横行も懸念する。
■高いハードル
仮置き場の設置が進まない一方、住民の除染に対する関心は高まっている。
県は6月定例県議会で、通学路や公園などの除染作業に対する補助制度を設けた。予算額は36億300万円で、自治会やPTA、ボランティアなどの団体が除染作業に使用するマスクや線量計、高圧洗浄機などの購入費のうち最大50万円まで支援する仕組みだ。各市町村への調査で、5千件弱の申請が見込まれるという。
国見町では、町内会など16団体が県の補助金を活用して実施する意向を示している。町内会の男性は「周辺町会で取り組むという話を聞いて、われわれも実施することにした。補助金で高圧洗浄機などを購入し、みんなで力を合わせ集会所などをきれいにしたい」と話す。
ただ、除染場所の自治体に仮置き場があるという申請条件が高いハードルになり、申請できない団体も出ている。これまでに県にあった申請は1件のみだ。県の担当者は「今後、国や市町村とともに住民に理解を求めていかないといけない」と課題を話す。
国は早く方針を 市町村、選定に苦悩 不法投棄の懸念も
■楽観できない
ほとんどの自治体が仮置き場の設置場所の選定に難航する中、福島、会津坂下、広野の3市町では、既に一部を設置した。
福島市は、市内でも比較的放射線量の高い大波地区に仮置き場一カ所を既に設置した。地区の除染作業で出た土砂などが入った土のうを置き、ビニールシートで覆っている。
ただ、市は住民からの仮置き場設置の強い要望があって実現した"例外"と受け止めている。今後、市内数カ所にも仮置き場を設置したい考えだが、「普通、仮置き場の設置は住民にとって決していい話ではない。1カ所でも反対されれば、他にも広がる可能性がある」と懸念。「民家からは最低100メートルは離れた場所でなければいけない」「万が一にも地下水に影響がでないよう」「水源地周辺は対象外に」...。候補地選定に慎重になるあまり、住民説明会の日程が決まらない。
町内全域が緊急時避難準備区域になっている広野町は、町内に住む住民の要望を受けて、除染で出た雑草やかわらなどの仮置き場を町有地に設置した。しかし、町の担当者は「今後、避難区域が解除されて多くの住民が戻れば反対の声も出るかもしれない。丁寧に説明していくしかない」と語る。
会津坂下町は、東日本大震災前から町有地に設けている側溝の汚泥の仮置き場に、引き続き側溝の汚泥や震災のがれきを置いている。もともと放射線量が低いうえ、民有地からは離れており、搬入量も少ないため、周辺住民からの苦情はないという。
■見えぬ「出口」
「除染で出たごみの仮置き場からの"出口"が決まってないのに、話が進むわけがない」。設置を検討している自治体関係者の多くは、国が最終処分の道筋を示していないことに不満を示す。
本宮市は10月までに市有地に2カ所の仮置き場を設置する計画だ。今後、説明会を開催するが、担当者は住民の理解が得られるか心配する。「国は早く最終処分場などを決めてほしい。これではいつまでたっても仮置き場の整備を進められない。このままでは、不法投棄のような事態が起きないか」と、早急な対応を訴えている。
【背景】
環境省は、除染で発生した土砂などの処分方法を示していない。同省は「前例がなく、膨大な量になることが予想される。検討はしているが、いつ方針を示せるかは、現時点でははっきりしない」としている。一方、放射性物質が付着した可燃物については先月31日、1キロ当たり8000ベクレルから10万ベクレル以下の焼却灰などの処分方法について取りまとめた。8000ベクレル以下は他の一般廃棄物と同様に埋めることが可能としている。