【立地の遺伝子11】「電源地域」の未来は 厳しい再生の道のり

「原発は地域振興に貢献してきた。原発に依存しない代わりに、何をしていくかを考えなくてはならない」。県商工会連合会長の田子正太郎(73)は11月の県総合計画審議会で注文を付けた。
県は震災と原発事故を受け、審議会に県総合計画「いきいき ふくしま創造プラン」の見直しを諮問した。県が「脱原発」の方針を打ち出したことを受け、県土づくりや、原子力に代わる再生可能エネルギー導入への意見が相次いだ。
しかし、今回の見直しは原発に的を絞った文言修正が中心だった。計画全体を見渡した改定作業は年明けから本格化する。
■荒涼たる風景
県庁本庁舎5階の復興・総合計画課は連日、午前零時を過ぎても明かりが消えない。県は審議会の答申を受けた総合計画の見直し議案を9日開会の12月定例議会に提出する。課長の松崎浩司(50)ら職員にとって議案の取りまとめが当面の大きな仕事だ。
松崎は1カ月ほど前に見たチェルノブイリ原発周辺の荒涼たる風景が忘れられない。11月上旬、福島大や市町村の職員らでつくる調査団に加わり、ベラルーシとウクライナ両国を視察した。
事故から25年が経過する現地で、強い望郷の念を抱き続ける住民と接した。警戒区域に自宅を残して仮設住宅や借り上げ住宅で暮らす県民の姿と二重映しになる。除染やモニタリング調査、医療、情報提供態勢を充実させる大切さを実感した。
解除の見通しが立たない避難区域、拡散した放射性物質、風評被害、人口流出...。県総合計画の前提である人口の見通し、暮らしのありよう、産業などは震災や原発事故で大きく変わった。新たに基礎データの収集、分析が必要だ。「まだまだ先は長い。これからが大変だ」。松崎は本格的な見直し作業を思い、厳しい表情を浮かべた。
■原発の代わり
「双葉地方の振興なくして、本県の振興はない」。知事佐藤雄平(63)は1日、県の復旧・復興本部会議で原発立地地域の再生に懸ける思いを強調した。原発廃炉を前提とした県復興計画の素案が示された会議だ。
県はかつて、東京電力、東北電力による原発で総出力約1300万キロワットの発電を可能とする青写真を国策に沿って描いた。
明治時代以来、会津地方の水力に始まり、浜通りの火力、原子力と、各発電所から首都圏に電気を送り続けてきた。同時に発電所の立地で地域振興も進めた。政治や行政、地域が受け継いできた「立地の遺伝子」をどう変えるのか-。原発事故の被害に直面する今、大きな岐路に立たされている。(文中敬称略)
=第2部「立地の遺伝子」は終わります=