放射線 放射性物質 Q&A 放射性ヨウ素 飛散した影響は
チェルノブイリ原発事故の発生後、原発の周辺住民の間で甲状腺がんの発生が増えたという話を聞きます。東京電力福島第一原発事故でも、甲状腺がんを引き起こす放射性ヨウ素が飛び散ったそうですが、大丈夫ですか。
■食物や飲み物を摂取制限甲状腺がん増考えにくい
チェルノブイリ原発事故の発生後には大量の放射性物質が広範囲に放出されました。放射性物質は、主に放射性ヨウ素や放射性セシウムであったことが分かっています。このうち特に放射性ヨウ素は体内に入ると、甲状腺に集まりやすい性質があります。甲状腺は甲状腺ホルモンというホルモンを分泌する臓器で、甲状腺ホルモンがヨウ素から合成されるためです。
チェルノブイリ原発事故では、甲状腺の中に入った放射性ヨウ素から放射線(ベータ線やガンマ線)が出ることで甲状腺が被ばくしました。この内部被ばくによってチェルノブイリ原発周辺の住民間で甲状腺がんが増加したと考えられています。
原発事故後、チェルノブイリでは放射性ヨウ素によって汚染された食物や飲み物(特に牛乳)に対し摂取制限や流通制限をしなかったため、これらを多量に食べたり飲んだりした周辺住民の内部被ばくを引き起こしたことが分かっています。
昨年3月の東日本大震災による東京電力福島第一原発事故の発生直後、日本では放射性ヨウ素や放射性セシウムに対して「暫定基準値」を設定しました。この基準を上回る食品や、水に対して出荷制限、摂取制限をかけました。
これはチェルノブイリの経験を踏まえ、汚染した食事を摂取することによる内部被ばくをできるだけ低く抑える目的の措置です。このため、県内ではチェルノブイリと違って、甲状腺がんの増加は考えにくいとみられています。
回答者
県放射線健康リスク管理アドバイザー・長崎大大学院教授(放射線医療科学専攻)高村昇さん