放射線 放射性物質 Q&A 生まれてくる子供に放射線の影響は 現在の線量では問題なし遺伝的影響も報告されず
【回答者】県放射線健康リスク管理アドバイザー・長崎大大学院教授(放射線医療科学専攻)高村昇さん
空間放射線量が平常時よりも高い県内で、これまで通りに妊娠、出産をしても大丈夫なのか、とても不安です。生まれてくる子供に放射線の影響は出ないのでしょうか。また、すでに妊娠している場合はいかがですか。
広島や長崎の原爆被爆者の方のケースでは、妊娠初期に高い線量の被ばくをした場合、小頭症の発症例が増えたことが報告されています。しかし、実際に発症したのは二〇〇ミリグレイを超えるようなとても高い線量を被ばくした胎児であり、現在の県内の状況とは全く異なります。
放射線についての国際的なガイドラインを定めた国際放射線防護委員会(ICRP)が出している勧告には以下のようなものがあります。
「放射線被ばくによる妊娠中絶について、胎児への一〇〇ミリグレイ未満の線量は、妊娠中絶の理由と考えるべきではない」
これは広島や長崎の原爆被爆者の方の調査を基に作られた勧告です。一〇〇ミリグレイを下回る被ばくであれば、生まれてくる赤ちゃんの心配はいらないということになります。事故発生から現在に至るまで、県内にお住まいのお母さんのおなかの中にいる赤ちゃんが一〇〇ミリグレイを上回る被ばくをするとは考えられません。
また、これから生まれるお子さんについて、遺伝的な影響を懸念されるかもしれませんが、広島・長崎の原爆被爆者の方の遺伝的影響(二世調査)をみても、がんや白血病をはじめ病気が増えたという報告はありません。まして県内の現在の放射線量はずっと低く、安心して妊娠、出産をしていただければと思います。
※ミリグレイ…放射線の吸収線量。ヨウ素131やセシウム137が出す放射線(β線、γ線)の場合、1ミリグレイは1ミリシーベルトとなる。