従業員と未来見詰め 「雇用守ることが復興に」 郡山に新工場、来年完成へ

■大熊で印刷会社経営 鈴木充男さん(57)
大熊町で20年以上「共同印刷」を経営していた鈴木充男さん(57)=郡山市菜根=は、避難先の郡山市で10月の新工場建設、来年前半の完成を目指す。県のふくしま産業復興企業立地補助金を申請中だ。「再出発を支えてくれた顧客と従業員のためにも、早く元の営業体制に戻す」。従業員との強い絆で東京電力福島第一原発事故を乗り越え、前向きに未来を見据える。
昨年9月に避難先の郡山市田村町の仮工場で事業を再開し、従業員と会社復興に取り組む。旧小高町(現南相馬市)出身で、原町高、東北学院大卒。昭和61年、大熊町に印刷会社を設立した。伝票などの業務用印刷で業績を伸ばし、2年前のピーク時に顧客は全国約800社に上った。原発事故後、工場も自宅も警戒区域となり、家族4人で田村市や宮城県に避難した。
顧客から「早く仕事を再開して」と激励の電話が相次いだ。全国各地に避難した従業員60人にはメールを送って励ました。知人の紹介で郡山市田村町に仮工場を借りることができ、複数の従業員が避難していた同市での操業を決意。昨年7月に大熊町の工場から機械を運び出した。
従業員36人が職場に戻り、顧客も約400社まで回復した。市内の別の場所に新工場の建設用地約3300平方メートルを確保し、3月に仮契約した。鈴木さんは「ついて来てくれた従業員に感謝している。どんな状況でも会社を続け、雇用を守ることが本県の復興につながる」と決意を新たにしている。