避難先 南会津の力に 整骨院、還暦での開業 地域貢献、妻と二人三脚

■富岡の柔道整復師 古和田精次郎さん(61)
「地域のためにできることを精いっぱいやりたい」。東京電力福島第一原発事故の影響で富岡町から避難した柔道整復師の古和田精次郎さん(61)は8日、避難先の南会津町田島字本町甲でこわだ整骨院を開院した。支えてくれた南会津の住民の力になろうと、還暦を迎えて初めての開業に踏み切った。看護師で妻の靖子さん(55)と二人三脚で地域に貢献するつもりだ。
県内各地の病院で患者のリハビリテーションを担当してきた。須賀川市出身で、30年ほど前、富岡町の今村病院に勤務し、町内に定住した。海岸沿いのウオーキングなどを日課にしながら幸せな日々を過ごしていたが、原発事故で靖子さんの実家下郷町がある南会津郡を転々とした。
「じっとしているのは性に合わなかった。何か自分にできることはないか考え続けた」。避難生活に葛藤を抱えていた昨年9月、南会津町での整骨院開業を決意した。同業者だけでなく、地域住民にも場所探しや建物の建設、経営法などの助言をもらいながら実現した。
40年間培ったマッサージの技術に加え、最新のベッド型ウオーターマッサージ器などを使って、患者の首、肩、腰の痛みや関節のしびれの治療、リハビリテーションなど幅広く対応する。運動による故障の治療にも取り組み、高齢者はもちろん、スポーツに励む子どもも支える。
「院長、腰が痛むんだけど」「マッサージをしましょう」。開業当日の8日は大勢の患者が訪れ、一人一人丁寧に対応した。スタッフは夫婦2人だけで、靖子さんが懸命に支える。富岡町に帰れる日がいつ来るか分からない。それでも「今は目の前の患者を全力で助けたい」と前を向いた。