伝統の神楽 復活誓う 文化助成金を活用

田中支社長から目録を受ける(右から)楽行政区長、渡辺総代

■南相馬市小高区 川原田行政区長 楽伸一郎さん(73)
 津波で地区内全40戸が全半壊した南相馬市小高区の川原田行政区。神社や獅子頭も流失したが地区の神楽が明治安田クオリティオブライフ文化財団の地域の伝統文化助成金を受けた。楽伸一郎行政区長(73)は「地区民が心のよりどころにしている神楽を残す」と復活を誓っている。11日、市役所で贈呈式が行われた。
 神楽は藩政時代から、氏子の健康、家内安全、五穀豊穣(ほうじょう)を願い奉納されてきた。太鼓と笛で2、3人が舞う獅子神楽だ。県内で唯一、悪霊を川に流す珍しい特徴がある。
 後継者不足で8年間途絶えていたが、平成22年に保存会を結成。獅子頭などを新調して23年1月の例祭日に復活した矢先、大震災と原発事故が起きた。警戒区域に指定され、地区民はばらばらになった。復活させようと楽行政区長が市教委に相談、同財団の助成の推薦が決まった。助成金は50万円。獅子頭と衣装を新調し太鼓や笛は補修する予定だ。昨年1月の神楽の模様は県と市の協力でDVDに保存しており、古里帰還後の神楽復活の参考にする。
 贈呈式で明治安田生命の田中寛いわき営業支社長が経過を説明してあいさつ、神楽保存会員で神社氏子総代の渡辺栄三さん(63)に目録を手渡した。楽行政区長は「伝統を次の世代に必ず引き継ぐ」と決意を込めてお礼を述べた。助成は平成3年からスタート。昨年度まで県内の19件を含む867件、4億7640万円が対象となっている。今年度は194件の応募があり、県内の3件を含む54件、2307万円が助成される。