良い品で恩返しを 顧客に支えられ新たな一歩

オーダーメードの靴作りを再開した清野さん夫妻

■新地で靴専門店経営 清野稔さん(68)京子さん(63)夫妻
 新地町でオーダーメード靴専門店「チヨノシューズ」を営む清野稔さん(68)・京子さん(63)夫妻は津波被災を乗り越え、事業を再開した。「お客さまが求め続けてくれる限り頑張りたい」と二人三脚で靴作りに励む。
 町内の谷地小屋の沿岸部に構えていた自宅兼事業所を津波で失った。今泉地区にある京子さんの実家の一部を作業場に改装し、昨夏から本格的に靴作りを再開した。半日は顧客巡り、半日は靴作り作業に精を出す日々が続く。
 15年ほど前に独立開業して以来、浜通りや宮城県を中心に口コミで顧客が広がり、親しまれていた。津波によって設備や材料だけでなく、7000~8000人分はあったとみられる顧客の足のデータなどを記した台帳を失った。「本当にやり直すことができるんだろうか」。変わり果てた被災地に足を運び、気持ちが揺らぐこともあった。
 震災後、避難生活を送る2人を案じて連絡をくれるなじみ客らがいた。台帳を失ったため記憶を頼って顧客先巡りを始めると、再開を待ち望む数多くの声があった。東京の修業時代の仲間らも機械などの調達に奔走してくれた。「自分たちの作る靴がこんなにも大切に思ってもらえている」。周囲の支援に後押しされ、新たな一歩を踏み出した。
 「どこにも負けない安くて良い品を作り続けたい」。靴作りによる"恩返し"を誓っている。
 同店の問い合わせは 電話090(7667)1758へ。