娘の写真元気の源 富岡で被災 元上司、同僚が支える

■喜多方・ヤマト運輸ドライバー 佐藤一成さん(25)
運転席に娘2人の写真を飾り、心を奮い立たせる。古里の富岡町を離れて1年3カ月。喜多方市のヤマト運輸喜多方南センターのセールスドライバー佐藤一成さん(25)は強い決意でトラックを走らせる。「必ず家族を守る」
富岡高卒業後、同社双葉富岡センターでセールスドライバーに就いた。妻明日香さん(30)との間に長女凜奈(りな)ちゃん(3つ)、次女愛奈(えな)ちゃん(1つ)をもうけた。
穏やかな生活は東京電力福島第一原発事故で一変する。慌ただしく会津若松市の体育館に避難した。2歳と生後3カ月の娘は毎日夜泣きし、明日香さんはストレスで母乳が出なくなった。お湯が不足してミルクが作れず、凜奈ちゃんは気管支炎になった。
窮地を救ったのは避難所にいる社員の状況を確認するため巡回していた元上司の佐藤哲也さんだった。「俺が住む喜多方市のアパートに空いている部屋があるからこい」。管理人に連絡し、家具を手配してくれた。両親らを含む家族9人で同市に移った。会社からも洋服、おむつ、コメなどの支援物資が届く。善意に胸が熱くなった。
昨年4月中旬、喜多方南センターで働き始めた。慣れない土地への不安は大きかったが、同僚が地図作りなどで支えてくれた。配達先のお客さんにも助けられている。「富岡から来たと言うと、温かく接してくれる」と感謝は尽きない。
「家族のために頑張るんだよ」。東日本大震災の5日前に病気で亡くなった祖母スガノさんの言葉に背中を押される。先の見えない生活は今後も続く。いつ古里に帰れるか分からない。それでも懸命に働き続ける。愛する妻と子のために。