二人三脚 海の幸に輝く笑顔 楢葉、富岡での再開胸に

二人三脚でいわきで営業を再開した木村さん夫妻

■いわきで海鮮店経営 木村重男さん(53)久美恵さん(45)
 楢葉町と富岡町で「海鮮四季工房きむらや」を経営していた木村重男さん(53)久美恵さん(45)夫妻が今年1月、JRいわき駅前にいわき駅前店をオープンさせ5カ月が過ぎた。素材を生かしたメニュー、夫婦と従業員の人柄、さらにJRいわき駅前の立地の良さが加わり連日、にぎわいを見せている。「毎日、新鮮な気持ちと緊張感を持ち、お客さんをお待ちしています」。新天地で2人の笑顔が輝く。
 重男さんの実家のある楢葉町に、地魚を売りにした海鮮創作料理の本店を構え、震災4カ月前には富岡町に富岡店を開店させた。しかし、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故が全てを奪った。
 震災後、1カ月ほど県外に避難し、いわき市に移った。根っからの料理人は、じっとしていられず昨年7月、市内平に弁当専門のきむらやいわき営業所(仕出しセンター)をつくり、1日平均400食を提供した。
 腕前を知る知人が物件を紹介してくれた。「店を再開してほしいな」
 何気ない知人の一言が夫婦の"再挑戦"を後押しした。
 今年1月、四季折々の海の幸を全国から取り寄せ新天地で営業を再開した。従業員7人のほとんどが避難生活が続く同郷人だ。
 双葉郡から避難する常連さんだけでなく、今は新しい客も足を運んでくれる。お客さんの喜ぶ姿に、自分たちも自然に元気が出るという。にぎわう店内を見渡しながら避難生活の中で多くの人に出会い、そして助けられたことを実感している。
 「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」。夫妻の笑顔の奥には、感謝の気持ちが込められている。
 名刺に記した楢葉本店と富岡店は「休業中」とした。古里の誇りを胸に秘め、営業再開の日を待つ。