「世界に一着」提供 震災で店舗兼住宅「全壊」 創業50年節目に再建

■郡山の洋服仕立業 鈴木弘修さん(49)
郡山市堂前町で洋服仕立業を営む鈴木弘修(ひろのぶ)さん(49)は19日までに、東日本大震災で「全壊」と判定された店舗兼住宅を建て直し、新しいスタートを切った。一時は廃業も考えたが、なじみ客の励ましに支えられ、創業50周年の節目の年に店舗を再建した。「苦しい時に応援してくれた顧客のためにも、"世界に一着"の洋服を提供したい」と職人としての使命感に燃えている。
鈴木さんは郡山市出身、郡山高卒。専修学校卒業後、東京都内での修業を経て24歳で家業の洋服店を継いだ。震災では木造2階建ての店舗兼住宅の基礎部分が陥没し、郡山市から「全壊」と判定された。営業再開を諦めかけたが、常連客から「どこで背広を作ったらいいのか。早く店を開けてくれ」との声が相次ぎ、再建を決意。昨年4月から12月まで被災店舗で営業し、建て替え工事が始まった今年1月からは近所に仮店舗を構えた。
6月に店舗兼住宅が完成し、7月9日から新店舗で営業を始めた。建て替え費用は金融機関からの融資や県の補助金を活用した。再出発に合わせて店名を「テーラースズキ」から「テーラーズ」に変更。新店舗は「隠れ家的」な外観と、バーカウンターを設けたサロン風の内装が特徴で、来店客がくつろげる雰囲気となっている。
鈴木さんは「震災を経験し、顧客のありがたみをつくづく感じた。市内では洋服の仕立屋が減り続けているが、顧客のためにも、中心市街地の商売の灯を消さないためにも営業を続ける」と決意を新たにしている。