記憶の中の故郷表現 22日から福島で個展 津波から"生還"の絵も

■相馬市原釜で被災した画家 阿部健一さん(39)
相馬市原釜の画家阿部健一さん(39)は、津波から奇跡的に残った作品などを集めた個展「震災をのりこえた絵たち」を22日から25日まで福島市のコラッセふくしま1階で開く。東日本大震災前の記憶を刻む美しい松川浦の風景画などを展示する。「多くの人に見ていただき、元気になってほしい」と願う。
20代のころから絵に取り組み、自宅近くの海、大好きなユリの花などを中心に描いてきた。日洋展などに入選している。日洋会東北支部会員、県美術家連盟会員。
震災による津波で自宅は全壊。父正美さん(65)、母幸子さん(62)ともども逃げて無事だった。準備中だった5回目の個展を目前に、数100点あった作品の半数以上が流された。絵の具は1本も残らなかった。避難所で体調を崩し正美さん、幸子さんが毎日、残った作品を軽トラックで運び出した。
自宅は取り壊され、居住も制限されているため、阿部さんは福島市の兄正幸さん(41)の家で制作を続ける。がれきの中から持ち出した作品は、汚れを落として修復した。
個展では「朝日(大洲海岸)」「松川浦の海苔だな」「磯部からみた太平洋(大洲海岸)」など油絵や水彩約40点を展示する。無事だった震災前のスケッチを基に仕上げた作品もある。優しい色彩で描かれた故郷の心象風景だ。入場無料。初日は正午~午後5時、23、24日は午前10時~午後5時、最終日は午前10時~正午。問い合わせは阿部幸子さん 電話090(1936)7816へ。
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阿部さんと幸子さんは13日、作品展PRのため福島民報社を訪れた。阿部さんは「被災した1人として、これからも喜怒哀楽を作品に込めて絵を描いていきたい」と語った。仮設住宅での巡回展も考えている。