地元川内の村民ら治療 仮設に出張、話し相手も

避難先の郡山市を拠点にカイロプラクティックを再開させた吉田正さん(右)とトシ子さん

■郡山でカイロプラクティック施術院再開 吉田正さん40・母トシ子さん66
 川内村でカイロプラクティック施術院を経営していた吉田正さん(40)と母親のトシ子さん(66)は、避難先の郡山市富久山町に新しい施術院を構え、川内村などからの避難者の治療に当たっている。2人は市内の仮設住宅に出張し、腰痛や肩凝りなどに悩む高齢者を治療しているほか、時には良き話し相手となって避難者の不安を和らげている。
 正さんは川内村出身で、富岡高川内校卒。歯科技工士の専門学校を経て郡山市や千葉県で歯科技工士として働いた後、平成15年に川内村に戻ってトシ子さんと共にカイロプラクティックを学び、18年に自宅に「さわやか施術院」を開院した。
 カイロプラクティックは、手技によって脊椎や骨盤のゆがみを矯正し、自然治癒力を回復させる民間療法の一種。東日本大震災前、正さんは村内をはじめ富岡町や大熊町、田村市などに出向いて施術し、1人暮らしの高齢者にとって頼れる存在だった。
 昨年の東京電力福島第一原発事故後は、郡山市のビッグパレットふくしまや泉崎村のホテルに避難した後、郡山市富田町の仮設住宅に入居した。「1日も早く仕事を再開したい」と今年1月、市内富久山町の中古住宅を購入し、自宅兼施術院とした。現在はこの自宅で治療しているほか、川内村に戻った村民の家や市内の仮設住宅に出向いている。今後、一般の利用者を増やしていきたいという。
 正さんは「施術を通じて避難者の体の痛みだけでなく、精神的なストレスを和らげたい。仮設住宅での孤独死を防ぐことにもつながる」と語る。川内村の自宅には父泰吉さん(69)が仕事の関係で住んでおり、帰還も頭をよぎるが、「村はまだ仕事ができる環境が整っていない。今は郡山で頑張るしかない」と話している。
 「さわやか施術院」は郡山市富久山町福原字鳴伊賀45の18。電話024(925)0438。