いつかは古里に... 跡継ぎへの期待 再出発の気持ち 店名に込める

■浪江、富岡のすし店被災、つくば市に「2代目 寿し松」オープン
松本清治さん(56)茂子さん(57)武士さん(28)
浪江、富岡の両町で親しまれてきたすし店「寿し松」が茨城県つくば市で再びのれんを掲げた。店主の松本清治さん(56)と妻の茂子さん(57)、長男の武士さん(28)が避難先での開店を決意。昨年11月から店を切り盛りする。10日は茂子さんが入会する浪江ロータリークラブ(RC)のメンバーが激励に駆け付けた。仲間の温かい心に「いつかは古里に店を構える...」との思いを強めた。
清治さんと茂子さんは昭和59年、自宅のある浪江町に「寿し松」の本店を開いた。平成9年には富岡町に2店目を開店。「鮮度に自信、味にまごころ」をモットーに地元の請戸、原釜の漁港や築地から直送された生きのいい食を提供してきた。
震災で大型冷蔵庫は倒れ、水槽や食器は壊れた。両店とも東京電力福島第一原発から10キロ程度の場所にあり、営業ができない。夫婦は福島市から埼玉県川越市を経て、昨年4月につくば市に落ち着いた。
新規開店に際して、以前にマグロを仕入れていた築地の業者は他の仕入れ業者を紹介してくれた。姫ネギを納入する京都の業者は送料を1年間負担すると申し出てくれた。
東京で修業していた武士さん、双葉町から避難してきた以前からの従業員橋本秀度さん(30)が加わった。後継者への期待と再出発の気持ちを込めて「2代目 寿し松」と改称し開店した。
つくば市には浪江や双葉から避難する500人ほどが暮らす。懐かしい味を求めて、訪れる人も多いという。10日に訪れた浪江RCの会員も食事を楽しみながら清治さん、茂子さんと語り合った。
清治さんは「震災前は当たり前と思っていたが、多くの人に支えられているとつくづく感じる。いつかは古里に店を出したい」と感謝。茂子さんは「全国に散らばっている地元の人たちが集まるような場にしていきたい」と話している。
「2代目 寿し松」はつくば市研究学園C30街区15画地エビスタウンB101 電話029(875)7575。