「陶芸の町」復興へ一歩 9月街中に作品1000点展示 美里会津本郷焼「風と土の芸術祭」 4年ぶり開催

「風と土の芸術祭」に向け、児童に作品作りを指導する西田さん(左)

 街なかを会津本郷焼の作品で彩る会津美里町の「風と土の芸術祭」が9月、4年ぶりに復活する。東日本大震災で工房の多くが被害を受け開催が見送られていた。東京電力福島第一原発事故の風評被害が続く中、「陶芸の町」を再び全国に発信しようと、酔月窯窯元西田理人さん(49)らが準備を進めている。本郷焼の作品をはじめ、地元の小中学生が制作した焼き物合わせて1000点以上を各所に飾る。町内で避難生活を送る楢葉町民の書道も展示し、復興を祈る。
 震災は全国有数の陶芸の町に、大きな被害をもたらした。町内に14ある窯元や窯業施設の1部が損壊し、多くの作品が壊れた。
 原発事故の風評被害が追い打ちを掛け、焼き物を買いに訪れる客は激減した。県外の取引先から、放射性物質検査の結果を示すよう求められたこともあった。平成19年から3年連続で開かれ、震災が起きた23年に再び予定されていた風と土の芸術祭の開催は見送りが決まった。
 会津美里町は17年、会津高田、会津本郷、新鶴の旧3町村が合併して誕生した。芸術祭は、町民の絆を強めるイベントとして窯元が中心となり企画した。「せっかく軌道に乗った芸術祭を、このまま終わらせてしまっていいのか...。陶芸の魅力をさらに広めたい」。当初から中心的な役割を担ってきた西田さんは芸術祭の復活を仲間に呼び掛けた。町商工会長の宗像利浩さん(56)=宗像窯窯元=が「もう1度、一緒に頑張ろう」と励ました。
 以前から交流のあった県外の陶芸家やアーティストに声を掛けると協力を申し出てくれた。既に町内の小中学生に陶芸の指導を始めている。西田さんは今回、実行委員長を務めることが決まっており、学校に出向いて教室を開いている。
 西田さんは「子どもたちには陶芸を楽しみながら古里について理解してもらい、芸術の力で地域を元気にできればうれしい」と話している。

■楢葉避難者の書も 空き店舗や公園活用
 風と土の芸術祭は9月14日から23日までの10日間、会津美里町で繰り広げられる。窯元などでつくる実行委員会と町商工会の主催。
 空き店舗や公園に会津本郷焼などの作品を展示する。本郷地域の窯元が「空」をテーマにそれぞれ作った皿も飾る。
 米国・ニューヨークで活躍するアーティスト長沢伸穂さんの指導で高田中生らが作成した松ぼっくりの焼き物、岐阜県の陶作家渡辺泰幸さんの手ほどきを受け町内の児童が作った風鈴なども含め、展示される作品総数は1000点を上回る見込みだ。
 楢葉町民から希望を募り、町内の3観音を巡った感想を書にしたためてもらう。郡山市の書家千葉清藍さんが指導する。
 芸術祭期間中、来場者を対象にしたワークショップを開く。陶芸を学ぶ会津工高生による作品披露や茶会も予定している。24年度の県高校演劇コンクールで最優秀賞を受賞した大沼高演劇部の公演もある。
 実行委員会はボランティアスタッフを募集している。対象は高校生以上。問い合わせは事務局の町商工会本郷支所 電話0242(56)2594へ。