なじみの味 楢葉で復活 共同店舗に6月入店

「武ちゃん食堂」で使っていたメニュー表を大切に持ち、6月の営業再開を楽しみに待つ佐藤さん夫婦

■武ちゃん食堂 佐藤茂樹さん(51)美由紀さん(49)夫婦

 今春、帰町時期を判断する楢葉町で長年、町民に愛された「武ちゃん食堂」は、6月にも町内で営業を再開する。昭和46年にJR竜田駅前に店を構え、地元きっての人気店だった。2代目の佐藤茂樹さん(51)美由紀さん(49)夫婦は一足早く"帰町"を決めた。町役場駐車場に整備される商業仮設共同店舗で古里再生の一役を担う覚悟だ。
 茂樹さんは地元の楢葉中を卒業して、いわき市の結婚式場で2年間料理を学び、17歳の時に実家の食堂を手伝い始めた。22歳で美由紀さんと結婚して以来、味を守り続けた。
 「どんな注文にも応える」とメニューにない料理が増え続け、営業時間外の宴会や出前などにも気軽に応じ、まさに年中無休で営業していた。
 東京電力福島第一原発事故の発生後、いわき市の借り上げ住宅に住む。3人の娘は独立し、茂樹さんは市内で調理人としてサラリーマン生活を送っている。「いわきで営業を再開してはどうか」と声を掛けられたこともあったが、「食堂を復活させる場は楢葉町で」と、こだわったという。
 昨年末、町から共同店舗への出店を持ち掛けられた。帰町時期の見通しが立たず、茂樹さんは迷いや不安があったという。「古里に戻る道しるべになって町の人に恩返しをしよう」。30年近く連れ添い、常に前向きな美由紀さんの後押しで再開にこぎ着けた。
 大黒柱として調理場に入るのは3年3カ月ぶりとなる。今でも大切にしまっている自慢のメニュー表は夫婦の歩みであり絆だ。当面は数種類の料理しか対応できないが、「少しずつ復興する古里のように、徐々に注文を増やしていきたい」という。