新たな味で古里に活気 会津産大豆使用 「若喜そばつゆ」発売 風評払拭の力に

新商品のそばつゆを手に、風評払拭(ふっしょく)と地域活性化を誓う冠木さん

■喜多方の「若喜商店」社長 冠木紳一郎さん(58)

 喜多方市の醸造・販売業「若喜商店」は会津産大豆で造る「天然醸造しょうゆ」をベースとした新商品「若喜 そばつゆ」を製造し、15日から販売を始めた。東京電力福島第一原発事故の風評で店の売り上げは落ち、市を訪れる観光客も減った。社長の冠木紳一郎さん(58)は「地場産品の安全性をアピールし、そばどころの喜多方を盛り上げたい」と意気込んでいる。
 若喜商店は宝暦5(1755)年に創業した。冠木さんは12代目として老舗の味を守る。一方、所有する蔵で教育旅行者らに赤べこの絵付け体験などを提供し、地域の観光発展にも貢献してきた。
 しかし原発事故で教育旅行客は激減。注文販売でも県外の取引先が本県産品を敬遠するようになり、平成23年度の収益は震災前に比べ3、4割減った。回復傾向にあるが以前の水準には戻っていない。
 打開策を模索していた昨年5月、喜多方観光協会の懇親会で、そば生産者の男性に「そばつゆを造ってみてはどうか」と提案された。同市は全国の市町村で5番目の栽培面積を誇るソバの名産地。「地域活性化にもつながる」と挑戦を決めた。
 県の「ふくしま・地域産業六次化復興支援事業補助金」を活用し、昨年11月から、そばつゆ造りの研究を始めた。ノウハウはなかったが、そば生産者や製麺業者が助言をくれた。木のおけで2年間熟成させる伝統の「天然醸造しょうゆ」を「かえし」に採用。5種類のサンプルを造り、多様なそばに適した味を追求した。
 試行錯誤の末に2月上旬、あっさりした風味が特長で和食の調理にも適した自信作が完成した。会津大短期大学部の学生が考えたラベルを貼り、500本を生産した。
 15日、市内の喜多方プラザで開かれた「そばフェスタ」に合わせて試食会を開き、好評を得た。今後さらに改良を加え、生産本数を増やす方針だ。「顧客の窓口を広げ、喜多方の新しい名物として売り出したい」と冠木さん。商品には熟成された郷土への思いが詰まっている。
 「若喜 そばつゆ」は275ミリリットル入りで480円(税込み)。問い合わせは若喜商店 電話0241(22)0010へ。